不当解雇・退職勧奨の解決方法

目次

(1)証拠収集

不当な解雇・退職勧奨を争う場合、当該解雇・退職勧奨が無効であることを法的に主張していくわけですが、そのために重要なのが証拠です。
しかし、実際に解雇などにより退職してしまうと会社に出入りできなくなるため、証拠を入手することが難しくなる可能性があります。また、退職時には使用者側と話し合いの機会がもたれることが多いものの口頭のみで話が進んでしまうことも多く、後日、言った言ってないの話になるケースが非常に多いです。そのため、退職前からしっかり準備を進めることが重要となります。

①就業規則など

解雇などの手続・要件は就業規則などに定められていることが一般的です。そのため、就業規則・賃金規則などの社内規則の写しを取っておくことは今後の話し合いをスムーズに進めるためにも重要です。就業規則に解雇の詳細な手続が記載されているようであれば、これを手掛かりに会社側に手続の履行を求めることも考えられます。

②録音・書面化

解雇や退職勧奨に関する話し合いが行われた際のやりとりは解雇や退職勧奨による退職の有効性を左右する重要な証拠となります。後日の不要な言い争いを防止するためにも、その際のやりとりはレコーダーやスマートフォンで録音しておくことが望ましいでしょう。
また、解雇・退職勧奨などの処分がなされた場合、証拠化の観点から処分内容を書面にして渡して欲しいと要求することも考えられます。なお、法律上、労働者が要求した場合、会社は解雇・退職理由についての証明書を交付しなければならないと定められており(労働基準法22条1項)、当該書面を交付するように要求することも有効な手段の1つです。

③メール・LINE

メールやLINEなどのやりとりも重要な証拠となります。そのため、口頭でのやりとりではなく、あえてメールやLINEでやりとりを行うことで解雇・退職の経緯を証拠化することも有効な手段といえます。例えば、メールなどで解雇の理由について問い合わせして、その回答をもらう等の方法が考えられます。
なお、退職してしまうと職場のPCのメールにアクセスできなくなりますので、必要なメールについてはプリントアウトして手元においておくなど、退職前からの準備が必要となります。

(2)解雇・退職勧奨の争い方

不当な解雇による退職については、法律上の解雇の要件を満たしておらず解雇は無効であり、現在も労働者の地位を有しているとして地位確認の請求や労働者としての地位を有していることを前提に賃金の支払いを求めていくケースが一般的です。
また、退職勧奨については、会社側の無理な説得(退職しなければ解雇するなど)に応じてやむを得ず退職したのであり、当該退職の意思表示は無効・取消しできるものであるとして、同様に労働者としての地位確認及び未払賃金請求を求めていくことになります。
いずれにケースでも、まずは訴訟外での交渉から始まり、当事者間での話し合いでは解決できない場合には労働審判または訴訟手続へと進んでいくことになりますが、具体的な手続の流れについては「事件解決までの流れ」をご確認ください。

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G&S法律事務所
野崎 智己(Nozaki Tomomi)

弁護士法人G&S法律事務所 パートナー弁護士。早稲田大学法務部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。第二東京弁護士会にて2014年弁護士登録。弁護士登録後、東京丸の内法律事務所での勤務を経て、2020年G&S法律事務所を設立。スタートアップ法務、医療法務を中心に不動産・建設・運送業などの企業法務を幅広く取り扱うとともに、離婚・労働・相続などの一般民事事件も担当。主な著書として、『一問一答 金融機関のための事業承継のための手引き』(経済法令研究会・2018年7月、共著) 、『不動産・建設取引の法律実務』(第一法規・2021年、共著)、「産業医の役割と損害賠償責任及びその対処」(産業医学レビューVol.32 No.1・令和元年、共著)、『弁護士のための医療法務入門』(第一法規・2020年、共著)等。