離婚後の生活|氏・住まい・収入・医療保険などについて弁護士が解説 

離婚したいと思ったとしても、離婚後の生活が心配で悩まれる方も多いと思います。 

また、自分や子どもの氏名、戸籍などにどう影響するか、自分の想定通りに変えるにはどのような手続をする必要があるかを知らない方も多いと思います。 

本コラムでは、離婚後の生活に備えて準備すべき事項などについて、離婚・男女問題に関して経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。

 

目次

1 離婚後の氏と戸籍 

(1)夫婦の氏(姓、苗字) 

ア 離婚届の提出 

離婚する場合は、離婚届を夫婦の本籍地又は夫婦の所在地の市区町村役場に提出します。なお、本籍地以外の市区町村役場に離婚届を提出する場合には夫婦の戸籍謄本を添付資料として提出する必要があります。 

調停や判決で離婚した場合は、原則として、調停や裁判を申し立てた人が、調停の成立や判決の確定から10日以内に離婚届を提出する義務があります。 

イ 離婚による復氏(婚姻前の氏に戻す) 

結婚の際に姓を変えた方は、離婚した場合、原則として旧姓(婚姻直前の姓)に戻ります。これを復氏といいます。 

ウ 婚氏続称(婚姻中の氏のまま) 

離婚しても、婚姻中の氏を使い続けたい方もいると思います。その場合、離婚と同時に、又は離婚した日から3か月以内に、市区町村役場に対して「離婚の際に称していた氏を称する届」(婚氏続称の届出。戸籍法77 条の2)をすることで、離婚の際に称していた氏を引き続き使用することができます(民法767 条2 項、771 条)。 

婚氏続称届に記載する氏名は、届出前の氏名です。つまり、離婚と同時であれば婚姻中の姓、離婚後であればいったん復氏した旧姓を記載します。 

また、婚氏続称の届出の際には家庭裁判所の審判などは不要ですが、いったん婚氏続称の届出をした後に旧姓に戻る場合は、家庭裁判所に氏の変更審判の申立をして、氏を変更する必要性を説明し、審判で氏の変更を認めてもらう必要があります。 

(2)夫婦の戸籍 

ア 婚氏続称の届出をした場合 

同一戸籍の世帯は同一の氏(姓、苗字)でなければならないため、離婚時に婚氏続称の届出をした場合、婚姻前の戸籍(実父母の戸籍など)に入ることができなくなります。そのため、氏(姓、苗字)は変わらないものの、新しい戸籍が作成されて、そこに自分が入ることになります。 

離婚と同時に婚氏続称の届出をするか、新戸籍編製の届出をすることで、婚姻前の戸籍に戻らずに新しい戸籍に移ることができます。 

イ 婚氏続称の届出をしなかった場合 

離婚時に婚氏続称の届出をしない場合、原則として婚姻前の戸籍(実父母の戸籍など)に戻ります。 

例外的に、結婚前の戸籍の在籍者が1人もいなくなって除籍されている場合や、離婚と同時に新戸籍編製届を出した場合は、新しい戸籍が作成されることになります。 

(3)子どもの氏 

離婚により自分が婚姻前の氏(姓、苗字)に復氏した場合であっても、何も届出をしなければ、子どもの氏は、婚姻中の氏のままで氏名に変更は生じません。これは自分が子どもの親権者になっている場合も同様です。 

旧姓に戻る親と同じ氏に変更したい場合は、家庭裁判所に、子の氏の変更許可申立てをして、変更の許可を受ける必要があります。離婚に伴って同居親と同じ旧姓に変更する場合は、通常、問題なく許可されますので、申立てを行いましょう。

(4)子どもの戸籍 

ア 概要 

前述のように離婚した場合、原則として子どもの氏(姓、苗字)は変わりませんので、何も届出をしなければ子どもの戸籍も同様に婚姻中のまま変更は生じません。 

親である自分と同じ戸籍に変更したい場合、現行法上、祖父母・親・子の3世代戸籍が認められておらず、2代までの戸籍しか認められていないため、離婚の際に婚姻前の戸籍に戻るのではなく、新戸籍編製の届出を行って新しい戸籍を作成する必要があります。また、前述のように、子どもの氏は婚姻中の氏のままで戸籍も元配偶者の戸籍に残ったままになっているため、新戸籍に移すには、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立てを行います。 

まとめると、親と同じ戸籍に変更したい場合は、市区町村役場に新戸籍編製の届出を行い、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立てを行う必要があるということです。 

なお、婚氏続称の届出をした場合、表面的には同じ子供と同じ氏のままですが、元配偶者の戸籍とは別の扱いになりますので、離婚後に子どもを自分の戸籍に移すためには同様に家庭裁判所に子の氏の変更許可申立てを行う必要があります。 

イ 分籍 

成人の子どもの場合は、親の離婚を契機に、戸籍を分籍して自分の戸籍を作ることもできます。親の再婚、離婚と自分の戸籍が切り離される等のメリットがあります。 

2 離婚後の住まい 

(1)婚姻期間中と同一の住居に居住する 

ア 配偶者等の単独所有不動産の場合 

婚姻中に同居していた住居(土地建物)が配偶者(夫・妻)の名義であるものの、離婚後も育児等の理由でその家に住み続ける場合、まずは、財産分与や、養育費の充当によって、住居の所有権を取得することが、安定して住み続ける最も確実な方法です。住宅ローンの借り換えができない場合は、住宅ローンの支払義務は配偶者に残ることになりますが、実際の月々の支払は誰が行うのかについても財産分与の中で取り決めをしておきましょう。 

しかし、住宅ローンを差し引いても、住居の所有権を得る形での財産分与等が難しい場合や、配偶者の親族(配偶者の父母等)名義の財産で、財産分与の対象とならない場合があります。 

事情によって住居の所有権を得ることが難しい場合は、ー定期間、賃料を払って(あるいは養育費と相殺して)賃貸借契約、または無償の使用貸借契約を結び、一定期間の居住を継続できるようにすることが考えられます。 

注意点として、家と敷地の名義が異なる場合、敷地の賃貸借契約を結ぶと、借地権となって解約が難しくなることがあるため、敷地の賃貸借契約を結ぶ場合は事前に専門家に相談することをお勧めします。 

イ 配偶者との共有不動産の場合 

自宅が夫婦の共有不動産となっている場合、共有者はその持ち分に応じて当該共有物全部を使用する権利を有します(民法249 条)。そのため、離婚後も当該不動産に居住し続けることが可能です。 

ただし、配偶者の持分について、持分に応じた賃料の支払が必要となります。 

また、将来、居住しなくなった配偶者から共有物分割請求(民法256 条)をされる場合もあるので、配偶者の単独所有名義の場合と同様に、離婚時に、財産分与や、養育費の充当によって、住居の所有権を取得することが望ましいです。 

ウ 賃貸不動産の場合 

借家で、賃貸借契約の契約者が配偶者となっている部屋に、配偶者が別居後も住み続ける場合、賃借人・居住者の名義変更を賃貸人(または仲介業者)に依頼しましょう。 

従来から居住者の届出が賃貸人(または仲介業者)に出ている人が引き続き居住する場合には通常名義変更に問題はありませんが、家賃の支払能力の不安などがある場合、元の配偶者の連帯保証を求められたり、名義変更に難色を示されることがあります。どうしても名義変更が難しい場合は、転居を検討しましょう。 

(2)転居する 

転居する場合、引き払う住居の敷金、退去費用などについて、夫婦間で負担を取り決めておくことが望ましいです。 

また、転居後の住宅について、多くの自治体で母子(父子)家庭は公営住宅への入居可否や保育園の入園、転園に優遇があるほか、子どもの疾病や障害によっては、医療福祉支援などが受けられる場合があるので、自治体に相談しておきましょう。 

3 離婚後の収入 

(1)公的扶助 

離婚後の母子家庭への経済的支援としては、一般家庭の児童手当と別に児童扶養手当や、母子寡婦福祉資金貸付等があります。また、生活全般支援(医療、就労等)については各自治体の母子福祉センターや母子自立支援員が、児童虐待や子どもの発達・養育への相談については各自治体の家庭児童相談室、あるいは児童家庭課等の家庭児童相談員が相談に応じています。 

ア 児童手当 

児童手当は、中学校卒業までの児童を養育している方が対象となります。 

支給額は、3歳未満が月額15,000円、3歳~小学校修了前が月額10,000円(第3子以降は月額15,000円)、中学生(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)が月額10,000円となります。 

イ 児童扶養手当 

児童扶養手当は、母子・父子家庭のうち、18歳に到達して最初の3月31日(年度末)までの児童を養育している方が対象となります。 

ひとり親家庭の生活の安定と自立の促進、児童の福祉の増進を図る事を目的に支給される手当です。児童(18歳に達する日以後の最初の3月31日まで)を監護している母子家庭の母および、児童を監護かつ生計を同じくしている父子家庭の父、またはその母や父に代わってその児童を養育している方(児童の父または母は除く)で基準を満たす方が手当を受けることができます。 

手当額は、請求者または配偶者および扶養義務者(同居している請求者の父母や兄弟姉妹など)の前年所得税法上の扶養する人数に応じ規定されている所得制限限度額を確認することによって、全部支給・一部支給・不支給が決まりますが具体的には以下のとおりです(令和6年11月現在)。 

・児童1人の場合 月額全部支給額45,500円、一部支給額45,490円から10,740円 

・児童2人目以降 月額全部支給額10,750円、一部支給額10,740円から5,380円を加算 

(2)就労支援 

ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業として、高等職業訓練促進給付金を活用して養成機関に在学し、就職に有利な資格の取得を目指すひとり親家庭の親に対し入学準備金・就職準備金の貸付けを行われています。 

(3)財産分与・養育費 

離婚時の財産分与・養育費の請求によって、離婚後の生活の安定度を高めることができます。詳細はそれぞれの解説で記載していますので、ご覧ください。 

関連記事:財産分与とは|対象・割合・手続きを弁護士が解説 

関連記事:養育費とは|算定方法・請求方法 

(4)その他 

ア 生活保護 

生活保護は、性別・年齢・既婚・未婚に限らず平等に受けることが可能な最低限の保障です。 

母子家庭の場合、扶養しているお子さんの人数におうじて加算があります。 

イ 公営住宅への入居 

税滞納のない母子(父子)家庭は、低所得で住宅に困窮している場合、優先的に公営住宅に入居できるとする自治体が多いです。 

離婚後、入居先に困窮している場合は、公営住宅への入居が考えられます。 

また、将来離婚した場合に住居に困ると想定される場合は、予め市町村に相談を検討することも一案です。 

4 離婚後の年金 

(1)離婚に伴う加入者種別の変更 

婚姻中に、専業主婦などで配偶者の扶養に入っていて第3号被保険者になっている場合、離婚後に、市区町村役場で国民年金への切り替えを行う必要があります。それ以外の場合でも、氏名や住所等の変更を届け出ましょう。 

(2)保険料の免除・納付猶予 

離婚により経済的に保険料納付が厳しくなった場合には、保険料免除・納付猶予制度の利用を検討しましょう。 

(3)年金分割 

厚生年金・共済に加入している配偶者と離婚をした方は、日本年金機構への申請により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができます。これを年金分割といいます。 

当事者間で合意した場合は、婚姻中の全期間について年金分割をすることができます。 

また、平成20年4月1日以降の年金記録については、単独で1/2ずつの年金分割を請求することができます。 

請求期間は離婚から2年以内のため、2年以内に請求するようにしましょう。 

手続は、まず日本年金機構に「年金分割のための情報提供請求書」を提出して情報請求を行い、それに基づいて、「標準報酬改定請求書」を提出します。

 

5 離婚後の健康保険 

(1)夫婦の健康保険 

ア 自身が会社員・公務員の場合 

自分自身が入っている健康保険を離婚後も継続する場合、特に切替手続は不要です。ただし、氏名や住所が変更になる場合、氏名や住所等の変更を届け出ましょう。 

イ 専業主婦又はパートタイマーの場合 

専業主婦(主夫)の方で配偶者の扶養に入っていた方は、離婚に伴い、元の健康保険の保険資格を喪失することになります。 

そこで、国民健康保険に加入する手続を行う必要があります。扶養から外れるのを機に職場の健康保険に加入できる場合は、そちらに加入することも考えられます。 

(2)子どもの健康保険 

離婚に伴い、元々の被保険者の親と同居しなくなる場合は、通常、元の健康保険の保険資格を喪失することになります。 

そこで、国民健康保険に加入する手続を行う必要があります。 

6 離婚前に備えておくべきこと 

離婚するにあたって、配偶者と養育費や面会交流、慰謝料、財産分与等の取り決めをしたときは、離婚協議書等の書面にして、証拠を残しましょう。 

また、養育費、慰謝料、財産分与等について法的に請求することのできる見込みがあるかどうかを、事前に弁護士に相談することをお勧めします。そうすることによって、配偶者と話し合う際に、法的に認められる請求なのか、法的には難しいことをお願いするのかが変わるからです。 

7 まとめ 

以上のとおり、離婚後の生活を具体的に想定して準備するためには、個別具体的な事例に応じて、弁護士に相談することが重要です。 

G&Sでは、離婚後に希望する生活や夫婦の収入、財産等の状況を踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて離婚をサポートします。離婚・男女問題については、G&Sまでお気軽にご相談ください。 

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弁護士法人G&S法律事務所

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