養育費とは|算定方法・請求方法
父母は離婚することで配偶者との婚姻関係が解消されますが、子どもとの親子関係が解消されることはありません。
そして、親には子どもを扶養する義務があることから(民法877条1項)、子どもの監護をしない親(非監護親)は、子どもの監護をする親(監護親)に対して、子どもの監護費用の分担として養育費を支払う義務があります。
もっとも、養育費の取り決めに応じない、養育費が支払われなくなったなどトラブルになることが少なくありません。
本コラムでは、養育費について、その算定方法・請求方法などを、離婚・男女問題に関して経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。
目次
1 養育費とは
(1)養育費の意義
養育費とは、子供が自立した生活を行えるようになるまでの、子育てにかかる費用を両親で分担するものです。
法律上、直系血族(祖父母―父母―子―孫の関係にある者)は互いに扶養する義務があり(民法877条1項)、夫婦が離婚するときは、監護費用の分担を話し合って取り決めることとされています(民法766条)。
(2)養育費に含まれるもの
養育費には、子どもの衣食住のための費用や健康保持のための医療費など、生きていくのに不可欠の費用以外にも、子どもの教育費、友達同士の交際費など、両親の生活水準に相応した自立した社会人として成長するために必要な費用も含まれます。
両親がともに大学を卒業している家庭など、学歴等に照らして子どもに大学などの高等教育を受けさせることが期待される場合には、子どもが大学を卒業するのに必要な授業料なども教育費として請求できることがあります。
これに対し、子どもが未成年でも、就職して社会人になった場合は、もう未成熟子とはいえないので、原則として養育費は請求できなくなります。
(3)婚姻費用との違い
養育費と混同しがちなものに婚姻費用があります。婚姻費用は、離婚前の配偶者(夫・妻)と子の生活費の自己負担分を支払うものであるのに対して、養育費は、離婚後に、子の生活費のうち自己負担分を支払うものです。
| 誰の生活費か | どの期間が対象か | |
|---|---|---|
| 婚姻費用 | 配偶者と子の生活費 | 婚姻中 |
| 養育費 | 子の生活費 | 離婚後 |
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2 養育費の支払期間
(1)いつから支払義務があるのか
離婚すると、子どもを監護する親は、監護していない親に対して、養育費を請求することができます。ただし、具体的な毎月の養育費の請求権が発生するのは、子どもを監護している親が、もう片親に「養育費を請求したときから」です。これは、養育費は、父母の「協議で定める」(民法766条)とされていて、養育費の支払額や支払方法の話し合いをしてはじめて具体的な支払義務が発生するとされているためです。
監護していない親が養育費の話し合いに応じない場合、実務上は、養育費を請求する調停を裁判所に申し立てた月から支払義務が生じるとされることが多いです。
請求せずに過ぎてしまった月の養育費を後から請求することは難しいため、養育費の請求をする場合は速やかに調停を申し立てるか、少なくとも内容証明郵便などのように客観的に養育費を請求したことを証明できるような方法で相手方に養育費を請求することが大切です。
(2)いつまで支払義務があるのか
養育費は、子どもが未成熟子を脱した時点、具体的には、子どもが学校を卒業して、通常、就職等で経済的に自立できるようになる年齢までが支払義務のある時期となります。
現在、子どもの成人年齢は18歳に引き下げられましたが、ほとんどの子どもは18歳になった時点で高校を卒業しておらず、経済的に自立できる年齢でないため、18歳とすることは稀です。
一般的には、「満20歳に達する日まで」や、「19歳に達した後初めて到来する3月まで」(高校卒業での就職を想定)「22歳に達した後初めて到来する3月まで」(大学卒業までを想定)といった取り決めをすることが多いです。
離婚協議書などで養育費の取り決めをする場合は、いつまで支払うのかを明確にしておくことが望ましいでしょう。
(3)再婚した場合はどうなるか
ア 義務者が再婚した場合
養育費を支払う側(義務者)が再婚した場合、養育費を減額できる場合があります。
再婚した場合、再婚相手に対して婚姻費用の分担義務を負うことになり、再婚相手との間に子どもが生まれた場合はその子どもに対する扶養義務も生じることになり、扶養する相手が増えるため、元々の子どもに対する養育費の負担割合が減ります。
この場合、養育費の合意後の事情変更があるため、養育費の負担額に著しい変更がある場合、養育費の分担額を変更することができます。
イ 権利者が再婚した場合
養育費を受け取る側(権利者)が再婚しても、再婚相手が子どもと養子縁組をしていなければ、従来どおり、実の親だけが引き続き子どもに対する扶養義務を負うので、養育費の支払義務に変動はありません。
ただし、再婚相手が子どもと養子縁組をしたときは、まず養親となった再婚相手が子を扶養する義務があることとなります。
その場合、養育費を支払う親(義務者)の扶養義務は二次的なものとなるため、通常、養育費は減額や免除となります。
3 養育費の支払い方法
養育費は、原則として月々の定額払いです。
養育費は、子どもが大人になるまでの長期間、毎月支払ってもらう必要のあるものなので、なるべく確実に支払ってもらうため、途中で取り決めを変更する必要のない、銀行振込や自動引き落としなどの方法を選択することをお勧めします。
また、可能な限り、養育費を支払う側(義務者)の給与振込口座などの財産を把握しておきましょう。
4 養育費の算定方法
(1)原則的な算定方法
養育費は子どもを監護している者が受け取ることになりますが、養育費を支払う側を義務者、養育費を受け取る側を権利者と呼んでいます。
養育費の額については、裁判所が義務者と権利者の基礎収入に応じて支払うべき金額を整理したものが「簡易算定表」として裁判所のHPで公表されています。
裁判所HP:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
算定表による標準的な養育費の額の確認方法は以下のとおりです。
- 子どもの人数と年齢(14歳未満⇔15歳以上)に応じて使用する算定表を選択します。
- 選択した表の権利者及び義務者の収入欄を、給与所得者か自営業者かの区別により選びます。
- 義務者の収入と権利者の収入の該当欄を交差させたところの枠内に記載されている額が標準的な養育費の額となります。
(2)例外的な算定方法
上で説明した養育費の算定表は、一般の家庭・育児で起こる臨時の出費などを考慮して月々の定額払いでカバーしているので、算定表に記載の幅を外れる養育費の額とする必要があるのは、算定表の金額では著しく不公平となる特別の事情がある場合に限られます。
ア 高額所得者
高額所得者で算定表の範囲を超える場合は、算定表そのものから養育費の額を算定できないため、算定表の傾斜割合を踏まえて算定するか、実際の生活費支出割合と貯蓄・投資に回す割合など、個別の事情を考慮して算定をし直します。
イ 住宅ローン
養育費算定表では、子ども分の一般的な住宅費を考慮していますが、住宅ローンは家族全員が住む広さで作られているため、養育費で考慮されている額よりも高額になります。
そこで、ローンの支払額と一般的な住宅費との差額を考慮して、養育費の額を変更することが多いです。
ウ 私立学校
養育費算定表では、子どもの一般的な学費を考慮していますが、私立校に通学する場合、公立校よりも学費が高額になります。養育費を支払う側(義務者)が私立学校への進学を承諾していて、収入や資産状況等からみて義務者にこれを負担させるべき場合,養育識の算定に際して、私立学校の学費等を考慮して、養育費の額が増額されることがあります。
5 養育費の請求方法
(1)話し合いによる方法
ア 夫婦間の話し合い
離婚前の場合、離婚する際の条件を話し合うことになることが一般的ですが、その際に離婚後の子供の親権や養育費についても合意することになります。
養育費を決めずに離婚した場合でも養育費を請求することは可能です。この場合、(元)夫婦間で話し合って合意すれば、その時点から決められた額の養育費が生じます。ただ、夫婦間で話し合って合意ができれば良いですが、話し合いがまとまらない場合にはいつまでも養育費を受け取れないことになりかねません。前述のように養育費を請求できるのは養育費を請求したときからなので、後日、養育費を請求したことを明らかにできるように、まずは内容証明郵便等の方法により婚姻費用をした事実を客観的に明らかにしておくことも考えられます。
イ 養育費合意書の作成
話し合って合意に達した場合は、後で言った言わないという事態にならないように合意内容を養育費合意書等の題名で文書化し、夫婦双方の記名押印を得ましょう。また、後日、合意書に従って婚姻費用を支払わなくなった場合に備えて、公正証書により合意書を作成しておくと強制執行が可能なため有効です。
ウ 法定養育費の新設
以上のように養育費は離婚時に取り決めておかないと原則として請求できませんでしたが、2026年4月に法定養育費が新設されたことにより、離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続き子どもの監護を行う同居親は、別居親に対して、一定額の「法定養育費」を請求することができるようになりました。金額については子供1人あたり月額2万円とされています。
関連記事:離婚時の親権・養育費・親子交流などに関する法改正(2026年4月施行)
(2)離婚調停・養育費請求調停
ア 調停の申立て
夫婦間で養育費について話し合ってみたが話し合いがまとまらない場合や、相手方が話し合いに応じない場合には、当事者同士での話し合いだけでは解決が難しいものと思われます。
このような場合には家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
離婚前の場合、離婚調停(夫婦関係調整調停)を家庭裁判所に申立て、その調停の中で他の離婚条件とあわせて離婚後の養育費についても協議します。
離婚後の場合は、すでに離婚が成立していますので家庭裁判所に養育費請求調停を申立てることになります。
養育費の合意がない場合は、原則として養育費を請求したとき、具体的には調停を申し立てた月から養育費が発生しますので、養育費の支払を求める場合は、速やかに申し立てることが肝心です。
イ 調停の進行
前述のように調停を申立てると、概ね1ヶ月先に調停期日が指定され、配偶者に対して、申立書の副本と、調停期日に裁判所に来るようにとの呼出状が送られます。
調停期日では、有識者で構成される調停委員2名(男女1名ずつ)が、あなたと(元)配偶者からそれぞれ交互に話を聞いて、養育費に関する話し合いを進めます。具体的には、当事者からそれぞれ源泉徴収票などの収入資料を提出してもらい、前述の簡易算定表の金額を基準に調停委員を通じた話し合いを経て、婚姻費用に関する合意を目指すことになります。
ウ 調停の成立
調停で話し合いがまとまったときは調停が成立します。調停が成立すると、裁判官が、夫婦双方に調停条項を確認し、裁判所の調停調書に記載されます。
このとき、調停調書の正本を送達するか聞かれます。調停調書正本は、後日、相手が調停調書に記載された養育費を支払わなくなった場合に、強制執行を行うのに必要な書類になります。そのため、養育費の支払い等を受ける側の場合は、調停調書の正本を送達してもらいましょう。
(3)審判
調停を重ねても話し合いがまとまらなかった場合や、相手方が調停に出席せず話し合いができなかった場合は、調停は不成立となります。
調停が不成立の場合、当事者の話し合いである調停から裁判所が当事者から提出された書類や証拠を踏まえて判断を下す審判という手続に移行することになります。
審判では、裁判所が、当事者から提出された証拠等を調べ、必要性が高い場合は証人尋問を行い、養育費の可否及び金額を裁判所が決定することになります。
6 養育費を支払ってくれない場合の対処法(履行の確保)
(1)支払請求
調停で養育費の額を取り決めたにもかかわらず養育費が支払われないようであれば、まずは相手に支払うように催促することになります。
それでも相手が養育費の支払に難色を示す用であれば、相手に手紙等の書面で支払を請求することが考えられます。
(2)履行勧告・履行命令
もし、支払請求に対して反応がなければ、裁判所から履行勧告や履行命令を行ってもらうことが考えられます。
履行勧告とは、家庭裁判所が、相手方に対し、調停で取り決めた支払を督促する手紙を送付し、通常、電話等も行ってくれる制度です。
履行命令とは、家庭裁判所が相手方に対し、一定の期間内に婚姻費用を支払うよう命令し、相手が期限を守らなければ10万円以下の過料の支払いを命じる制度です。
(3)強制執行
養育費に関する調停調書や審判書、判決書があれば、法律上、強制執行することができます。また、公正証書で作成した合意書で養育費を取り決めた場合についても強制執行は認められています。
他方で、公正証書によらずに父母間で作成した合意書などの文書に基づいて直ちに強制執行をすることは認められていませんでしたが、2026年4月からは養育費債権に「先取特権」という優先権が付与されることになったため、一定の金額の範囲(子供1人あたり月額8万円)については調停や審判などの手続を経ずに差押えを申し立てることができるようになりました。
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具体的には、相手方の勤務先の給与を差し押さえたり、預貯金が預けてある金融機関がわかれば預貯金を差押えることができます。
7 養育費の変更
(1)協議
養育費の増額・減額の変更は、まず、相手方と裁判所の養育費算定表を確認しつつ話し合っていきましょう。
低額の養育費でいったん合意をしてしまった場合や、成長などで養育費の額が不相当になっている場合は、話し合いで養育費の増額・減額の変更をお願いすることが考えられます。
(2)調停
養育費の取り決めをしてから、再婚や、事情が大きく変動している場合は、調停で養育費の増額・減額の変更を求めることが考えられます。
相手方となる親の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に、養育費(増額・減額)調停を申し立てます。
家庭裁判所から選任された調停委員が、当事者双方の言い分を聴き、調整を図り、合意を目指していきます。
(3)審判
相手方が調停に応じない場合や、調停での話し合いがまとまらなかった場合は、当事者双方が希望しない場合を除いて自動的に審判に移行し、養育費の増減を認めるかを裁判官が決定します。
審判で増額・減額が認められた場合は、支払う側はそれに従い養育費を支払わなければなりません。
8 まとめ
以上のとおり、どのようにいくらの養育費請求を行うかは、戦略的に考える必要があり、個別具体的な事例に応じて、弁護士の判断を仰ぐことが望ましいです。
G&Sでは、相談に来るまでの両親の養育状況を踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて養育費請求を行います。養育費については、G&Sまでお気軽にご相談ください。
