女性の離婚問題・離婚相談

離婚を考えている女性には、夫との離婚に際して生じる次のような問題に悩まれる方が多くいらっしゃると思います。

  • 離婚を考えているが、あまり周辺の人には知られたくない。
  • 夫が不倫をしているのではないかと疑っているが、どうしたらいいか分からない。
  • 夫も子どもの親権(監護権)を主張しそう。確実に親権(監護権)を確保したい。
  • 離婚しても経済的な不安がある。離婚した場合、いくらぐらいもらうことができそうか。
  • 夫との話し合いを自分でするのに耐えられそうにない。

本コラムでは、女性が離婚する場合に関する問題などについて、離婚・男女問題に関して経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。

目次

1 女性側の離婚リスク(特に専業主婦の場合)

一般的に、女性、特に専業主婦が離婚する際は、たとえば次のようなリスクがあります。

  • 女性が離婚を申し入れた際に、夫が離婚に合意しないリスク
  • 離婚後(離婚に向けた別居後)の生活の変化

夫婦が離婚することに合意した場合、離婚届に双方が署名捺印して役所に提出することで離婚することができます。しかし、こちらが離婚を望んでも夫が同意せず、離婚届を書いてくれない場合はすぐには離婚ができません。その場合、弁護士を介したり、裁判所の離婚調停などを使ったりして、離婚に向けて話し合いをし、それでも合意ができない場合は離婚訴訟を提起することも考える必要があります。

そして、当事者同士(弁護士を介する場合も含む)の離婚協議に要する期間は様々ですが、裁判所の離婚調停は令和6年の統計によると約5割の事件は3~6カ月、約3割の事件は6カ月以上1年未満を要します。さらに、離婚調停で合意に至らず、離婚訴訟となった場合、離婚調停の後、さらに平均15.5カ月を要します。

そして、夫が離婚に合意しないにもかかわらず裁判所が離婚訴訟において離婚を命ずる判決を下すには、後述の通り離婚事由が必要です。

最高裁判所事務総局:令和6年 司法統計年報 3家事編

最高裁判所事務総局家庭局:人事訴訟事件の概況-令和6年1月~12月-

したがって、離婚を切り出すに当たっては、離婚が成立して財産分与等を受け取った後だけではなく、離婚が成立する前(離婚に伴う財産分与等を受け取る前)に別居することになった際、どこで、どのように生活するか、どうやって生計を立てていくかを真剣に考えるとともに、そもそも夫はどういった条件であれば離婚に応じる可能性があるか、その条件で離婚後の生活は成り立つか、こちらの望む条件で夫が離婚に応じなかった場合に裁判所はどういった条件で強制的に離婚を命じてくれる見込みがあり、それにどれだけの心理的、経済的、時間的な負担を要するか、という見通しを立てておく必要があります。

特に結婚している間は家事や育児の負担が重かったという女性の場合、今の収入が少なかったり、専業主婦で収入がなかったりすることも多く、子どもがいる場合には子どもの生活費や学費なども考えなければなりません。

しっかりと見通しを立てて、後悔しない離婚を目指しましょう。

2 女性側からみた離婚戦略(離婚を申し入れる前にまず検討すべきこと)

(1)離婚に際して話し合う事項、手続きの流れの確認

離婚をしたいと思ったときに最初にやるべきことは、離婚の手続の流れを確認して、どのくらいの時間と手続が必要か、そして、後述する一般的に離婚する際に夫と話し合う事項(離婚そのものの他、親権、慰謝料、財産分与等)の確認とそのうちスムーズに合意ができる事項と難航しそうな事項をピックアップしてみることです。

加えて、別居して離婚に向けた話し合いをしている最中、さらには話し合いがまとまって離婚した後の生活について具体的なイメージを固めることです。

もっとも、DVや子どもへの虐待など差し迫った危険から逃れるために着の身着のまま自宅を出てしまったなど、離婚に向けた準備を十分にできていなくても離婚を申し入れなければならない場合もあるでしょう。そういった場合は今後どのようにすればより有利にかつ安全に離婚できるか、というゴールに向けて、具体的な事情をもとに計画すべく、早急に弁護士に相談すべきです。

関連記事:離婚手続きの流れと進め方│4つの離婚方法と事前準備

(2)生活基盤の検討

離婚後はもちろん、離婚の話を持ち掛けた直後からご自身がどうやって生活していくのか、ということについて具体的な計画を立てる必要があります。

ア 生活費(婚姻費用・養育費)

夫より収入が少ない女性の場合、別居して離婚に向けた話し合いをしている最中であっても、未だ法的に夫婦である以上、通常は扶助義務(民法752条)に基づき、生活費の分担を請求することができます(これを「婚姻費用」といいます)。婚姻費用は、当事者間での協議がまとまらず、裁判所での調停・審判において判断されるときには、互いの収入と何歳の子どもを何人どちらが面倒を見ているかということをもとに、統計資料に基づいてある程度、機械的に算出した後に個別の事情を加味して決定されるため、裁判所のHPで公表されている基準をもとに婚姻費用として受け取れる金額を試算してみて、別居中の生活のイメージを固めるとよいでしょう。

さらに、離婚の成立後は、財産分与や慰謝料といったものの他、未成年の子どもの面倒をみていく場合は子どもの養育費を元夫から払ってもらうこととなりますが、こちらも婚姻費用と同様に裁判所のHPで基準が公表されています。

裁判所:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

イ 住居・氏・健康保険等

まず住居については、離婚に向けて一時的に別居するために女性が自宅を出るのか、話し合って一旦は夫に出て行ってもらうのか、そして女性が出ていくとするとご自身の実家などを頼るのか、ご自身で別に賃貸物件を借りるのか、引っ越しや初期費用としてどの程度の金額を要するかといったことを計算しなければなりません。さらに離婚後について、自宅の所有権や住宅ローン、購入した際の背景事情などを考慮して、財産分与として自宅を女性のものにするなどして離婚後も現在の自宅に住み続けるべきか、別の場所で生活すべきかを検討する必要があります。もちろん、子どもがいる場合には学校などの転校が必要か否かなども検討する際に重要な要素になるでしょう。

次に婚姻して夫の氏を名乗っている女性は、離婚後の戸籍・氏をどうするか、また健康保険について夫の扶養に入っている場合は離婚後にどうするのか、といったことも検討しておく必要があります。

いずれも詳細については関連記事に記載がありますのでご参照ください。

関連記事:離婚後の生活│氏・住まい・収入・医療保険などについて弁護士が解説

ウ 公的扶助

離婚の成立後は、ひとり親控除など税制面で優遇されたり、児童扶養手当をはじめとする公的機関の支援を受けたりすることができる可能性がありますし、離婚後の生活を安定させるために一時的に必要な資金については公的な無利子・低利子での貸付事業を利用することができることもあります。婚姻中とは収入の面についても支出の面についても状況が変わりますので、離婚後の生活を組み立てる上では公的な扶助についても検討しておくべきでしょう。

国税庁:寡婦控除

国税庁:ひとり親控除

こども家庭庁:児童扶養手当について

東京都福祉局:母子福祉資金・父子福祉資金の貸付け

鹿児島県:母子(父子)(寡婦)福祉資金貸付事業

(3)有利に協議するための証拠の確保

離婚を申し入れたり、離婚についての協議を始めることを前提に別居を始めたりすると、夫が、それまで任せていた家計の管理を自分で行うようになったり、合意ができなかった場合に裁判上不利になる証拠を妻に渡さないようにしたりすることもあり得ます。

例えば、家計を管理するために女性に渡していた夫名義の預金通帳やクレジットカードの返却を求めたり、毎月手渡していた給与明細を見せなくなったりするほか、不貞行為の証拠をとられないように不貞相手との接触を控えるようになったり、極端な場合、財産分与として支払う金額を減らすために財産の一部を隠したりすることも考えられます。

もちろん、夫婦とはいえ互いのプライバシーは尊重しなければなりませんので無理な方法は避けるべきでしょうし、一刻も早く離婚したいという気持ちからすぐに離婚を申し入れる方もいらっしゃるでしょうが、離婚を申し入れる前に、可能な限り、適法に証拠を確保することも重要でしょう。

(4)離婚についての話し合いをする際の具体的な話し方

(1)と(3)の検討・準備は、あくまで話し合いがうまくいかずに長引いて、裁判所の離婚調停や離婚訴訟になってしまった場合の見通しとその備えです。

前述の通り、離婚調停や離婚訴訟には相当の期間を要し、その間に受ける時間的・心理的な負担は無視できるものではありません。また、特に離婚訴訟で判決が下されることになった場合は、争点となった事項について両極端な結論となり、柔軟に両当事者にとって合理的な結論を導けるとは限りません。

このようなことを考えると、離婚調停や訴訟に至る前に当事者同士で納得のいく話し合いの結果、柔軟にかつ両当事者にとって合理的な条件で離婚に合意し、離婚後の生活が十分に成り立つ見込みがあるならばそれに越したことはない、ともいえます。

もちろん裁判所の離婚調停や離婚訴訟になってしまった場合の見通しとその備えを整えることは重要です。もっとも、最初から当事者間での解決の可能性を排除するのは最善策とは限らないでしょうから、夫と話し合いができる状況であれば、どうやって離婚の話を切り出すと合意を目指しやすいだろうかということも真剣に考えるべきだと思います。

ア 夫に離婚を求めるとき

離婚の話題を切り出す際は、相手の状況をよく観察し、適切なタイミングを選びましょう。相手が冷静に話せない状況で伝えるのは避けるべきです。お互いに時間と心の余裕があり、平穏な状態で、さらにアルコールが入っていないときに話を切り出すのが理想です。突然の告白で相手を過度に驚かせないよう、「重要な話がある」や「冷静に聞いてほしい」といった前置きをして、一呼吸おいてから話し始めましょう。そして、感情的にならず冷静な態度で伝えることを心がけてください。

また、離婚の原因が不貞行為など相手に明らかに非があるケースはともかく、性格の不一致などどちらに非があるか明確でない場合は、相手を過度に非難しないよう注意してください。

離婚を希望する理由を聞かれた際には、簡潔に伝えるよう意識しましょう。詳細に説明しすぎると、不満を述べているように感じられ、そこから口論に発展して大事な離婚の話し合いが行き詰まってしまう可能性があります。

さらに、相手の気持ちを尋ねることも重要です。相手の発言を遮ったり、その場で反論したりするのは避けましょう。反論をするにしても、相手の話が終わるのを待ってからにしてください。また、反論したくなる場面でも、自分の離婚への決意が固い場合は、無用な反論を控えましょう。相手の意見にある程度理解を示しつつも、離婚の意思が揺るがないことを伝えるようにしてください。

関係修復の可能性が残っている場合には、最初から離婚を前提とした話し方をするべきではありません。相談する形で話を始めましょう。また、最初の話し合いで無理に結論を出そうとすると、うまく進まないことが多いです。同じ内容が繰り返される前に話を一旦切り上げ、次回に続けるのがおすすめです。その間に相手も気持ちを整理する時間を得ることができるでしょう。

イ 夫から離婚を求められたとき

逆に、夫から離婚を求められた場合、毎日の辛い気持ちを解消したい、早くスッキリしたい、という気持ちから、離婚条件を詰めずに離婚届を提出してしまう方もいます。

しかし、離婚するために準備しなければならないことや将来の生活も見据えた有利な条件で離婚するためにすべきことがあります。離婚をしてしまう前に、自分の置かれた状況を整理し、情報収集をした上で、しっかりと条件交渉をすることをお勧めします。

そのため、離婚を切り出されてすぐに応じてしまうのではなく、夫の言い分を聞いた上で、一旦考えさせてほしいと伝えた上で、(1)、(3)で挙げたような事前準備を進めながら、友人や、弁護士に相談する時間を設けた上で、改めて夫との話し合いに臨むことが望ましいでしょう。

また話し合いの最中に感情的になって離婚届にサインしてしまったが、まだ離婚そのものやその条件についても納得のいく話し合いができてない場合など、すぐに夫に離婚届を提出されて離婚が成立してしまうと困る場合には、市区町村に離婚届の不受理申出をすることが必要になるでしょう。

法務省民事局:ご存じですか?あなたを守る不受理申出制度

3 一般的に離婚する際に夫と話し合う事項について

一般的に離婚する際にどういった内容を夫と話し合う必要があるのか、またそのそれぞれについて話し合いがまとまらず裁判所の調停・訴訟となった場合にはどういった考えのもとに判断され、それを前提にどういった事情・証拠を確認しておくべきか、ということについてお話しします。

(1)婚姻費用(養育費)

まず、離婚の話し合いに時間を要する場合はその話し合いの最中の生活をどうするか、即座に離婚すること自体は合意できる場合は離婚成立後の生活をどうするかということが喫緊の課題です。

この点については前述のとおり、通常、離婚に向けて別居した後、離婚が成立するまでの間、夫婦の生活費の分担のため、収入の少ない方が多い方に対して、婚姻費用の請求ができます。

また、離婚が成立した後、未成年の子どもがいる場合、その面倒を見る親は、他方に対して養育費の請求ができます。

婚姻費用も養育費も基本的な考え方は前述のとおりで、当事者間の話し合いがまとまらずに裁判所が判断する場合は、両当事者の収入をもとに算出したうえで、個別の事情を加味して決定されますので、夫側の収入を課税証明書や源泉徴収票、確定申告書の写しなどで正確に把握するとともに、その証拠を確保しておくことが望ましいでしょう。特に、夫が会社経営者、自営業者、副業を行っている、など収入の全容を把握しづらい場合は注意が必要です。

もっとも、同居中に夫の収入の証拠を確保できず、話し合いの最中に夫に資料を提供するよう求めて拒絶されたとしても、裁判所の調停・審判においては裁判所が適切な資料の提示と共に収入を開示するよう指示されるのが通常です。なので、そういった場合は、漫然と夫から提示された婚姻費用や養育費の金額で合意するのではなく、調停・審判において裁判所の介入の下、適切な金額を得られるようにすべきです。

関連記事:婚姻費用とは│算定方法・請求方法

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(2)離婚事由

ア 離婚事由の検討

次に、条件の問題ではなく、離婚すること自体について、合意ができない場合にはどうなるかということが問題となります。

この点については、離婚事由、すなわち、相手がどのような説得を受けても離婚に同意しない場合であっても、裁判を起こした場合に裁判所が強制的に離婚を命じる判決を下すことができる法律上の理由があるか否かが問題となります。

離婚事由は、以下の民法770条1項各号に定められている4つです。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

近年、裁判所で離婚事由があると認められるケースは、不貞行為(1号)、婚姻を継続し難い重大なDV(家庭内暴力)、長期間の別居等による夫婦関係の破綻(5号)が多いです。

本人同士(あるいは弁護士を介して)の離婚協議、それがまとまらなかった際の裁判所の離婚調停において離婚及びその条件について合意できなかった場合に、離婚事由に該当する事実の有無及びその証拠としてどういったものがありうるか、ということについて見通しを立てておけば、離婚協議あるいは調停の話し合いにおいてどういった条件を提示(あるいは受諾)するか、さらにその話し合いにどれだけの時間をかけるべきか、といったことの判断の助けになります。

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イ 離婚事由の類型ごとに考えるべきこと

不貞行為とは、結婚している人が配偶者以外の人と性的関係を持つことをいいます。不貞行為となる性的関係を持ったことを示す証拠、たとえば、ホテルや相手の家に2人きりで滞在したことを示す出入り時の写真や、相手とのメールやLINE等でのやり取りなどを確保することが考えられます。もちろん、不貞行為の頻度や期間が多く、長いほど、離婚が認められやすくなるので、頻度や期間を裏付けられる証拠があるとなおよいでしょう。

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DV(家庭内暴力)は、ドメスティック・バイオレンスの略称です。配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力をいい、DVの程度、頻度、期間から夫婦関係が破綻していて、今後回復することが難しいと認められる場合は、離婚事由があると判断されます。

DVの証拠としては、怪我の写真や、診断書、夫が暴力を振るったことを認める会話の録音などを取ることが考えられます。さらにDVを受けた際に警察に通報し、警官が現場に臨場した、などといったことや、管轄警察署や都道府県(市区町村)の相談窓口に相談したことがあれば、そういった公的機関の記録も証拠になりえます。

DVについても、暴力の程度、頻度、期間が激しく、多く、長いほど、離婚が認められやすくなりますが、ご自身の身体の安全を優先すべきなので、場合によっては後述する保護命令も視野に、早期に弁護士に相談して離婚への道筋を検討すべきです。

長期間の別居があった場合、既に夫婦関係が破綻していて回復が難しいことが明らかであるとして、離婚事由があると認められることが多いです。別居に至るまでの婚姻期間の長さにもよりますが、通常、3~5年程度の別居期間を経ても同居関係に戻れない場合には、離婚が認められることが多いです。

別居を開始した時点で引っ越した方が住民票を移している場合は住民票が証拠となります。それ以外では、家の鍵の交換や車の移動、郵便物の転送届の控えなどを、いつから別居したかの証拠とすることがあります。

(3) 親権(監護権)・面会交流

ア 親権とは

そして、未成年の子供がいる場合は、離婚する際には当事者同士の協議又は判決で、父母の双方もしくはどちらかを親権者として定める必要があります。親権とは、親が子どものために監護・教育を行なったり(身上監護)、子供の財産を管理したり(財産管理)する、親の権限・義務のことです(民法820条)。

イ 親権者の決定方法

2026年4月に施行された改正民法では、離婚後も父母の共同親権が認められました(民法819条)が、共同親権の場合であっても、今度は、父母どちらが実際に子どもを養育するか、という監護の問題が生じます。

親権者もしくは監護者を決める際、15歳以上であれば子の意見を聞いて決めなければならないとされていますが、それ未満の年齢でも、子どもが会話できる年齢であれば、その意見が尊重されることが多いです。

子どもの意向以外の考慮要素として、以下の5つが挙げられます。上の要素ほど優先して考慮される傾向にあります。

  1. 監護の継続性
  2. 子の監護状況
  3. 母性優先
  4. 兄弟姉妹不分離
  5. 監護開始の際の態様

なお、夫側から「母親の経済力が乏しい一方で父親は子どもを監護するのに十分な経済力があり、経済的な側面から、子どもの監護は父親が担うべきである」というような主張がされることがありますが、裁判所では養育費を十分に受け渡せば解決する問題と考えられがちで、子どもの利益を考慮する上では、決定的な主張にはなり得ません。

他方で、別居に際して転居、転校等をせざるを得なかった場合には、時間的にも経済的にも養育環境が十分に充実していることや、子どもが新しい環境に順調に馴染んでいることなどを示し、理解を得ることが重要となります。

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ウ 面会交流

親権(監護権)を得た場合でも、父親と子どもの交流について検討しなければなりません。

親権者(監護者)にならなかった親が、子どもに面会して一緒に時間を過ごしたり、電話・メールなどで連絡を取ったりするなどといった交流をすることを面会交流といい、その具体的なやり方や頻度などは、両親が離婚するときに協議で定め、協議が難しいときは家庭裁判所が決定することができます(民法766条)

したがって、面会交流を行うのに支障がない場合はどのように行うのが子どものために最もよいのかという観点から具体的な方法を、DV・子どもへの虐待など面会交流を行うのに支障がありうる場合はそれをどのようにしたら夫(あるいは裁判所)に納得してもらえるか、ということを検討する必要があります。

関連記事:面会交流とは│ルール・決め方・注意点を弁護士が解説

(4)財産分与

財産分与は、離婚時に夫婦が共同で築いた財産を分割する制度です。これには、以下の3つの要素が含まれます:

  • 清算的財産分与: 婚姻中に築いた財産を分配する。
  • 扶養的財産分与: 離婚後の生活維持を目的とした金銭補充。
  • 慰謝料的財産分与: 慰謝料を含む財産分与。

2026年4月1日に施行された改正民法によって、婚姻中に夫婦で築いた財産に対する寄与が原則として相等しいこと、すなわち原則として清算的財産分与としては2分の1ずつ分け合うことが明記されました。(民法768条3項)

通常は、夫婦どちらの名義かにかかわらず、また預金、車、不動産などの形を問わず、それを半分ずつになるように分配するので、自分の財産、夫の単独名義の財産、夫婦の共有名義の財産をそれぞれ把握し、財産分与としていくら(何を)を請求できるか、具体的に試算しておきましょう。特に自宅不動産が財産分与の対象で、まだ住宅ローンが残っている場合などは、その帰趨が、離婚後にどこで生活するか、という生活基盤の設計にも深くかかわってきます。なお、親兄弟から相続した相続財産(遺産)や、婚姻前から保有している財産は、特有財産といい、財産分与の対象になりません。

また、財産に関する書類、例えば、不動産の登記簿謄本、自動車検査証、保険証書、年金証書、通帳、有価証券、ローン契約書、賃貸借契約書等の写しをとった後に離婚の協議を始めるのが望ましいです。当事者同士で話し合うときも、同じ資料を見ながら正確な情報を基に話し合った方が双方納得のいく結論を導き出しやすいですし、話し合いがまとまらず調停、訴訟となった場合には、夫名義の財産の存在を示す証拠になります。もちろん夫名義の財産の資料もありますから、同居中の妻といっても適法かつ正確に調べるには限界があるでしょうから、どのような資料をどうやって集めるか、という点についても個別の事情に基づいて弁護士に相談することをお勧めします。

関連記事:財産分与とは│対象・割合・手続きを弁護士が解説

(5)慰謝料

専らまたは主として夫の行為によって婚姻関係が破綻し、離婚に至ったといえる場合(典型的には不貞行為、DVなど)は、夫に慰謝料を請求することができます。

反対に、女性の行為によって婚姻関係が破綻し、離婚に至ったといえる場合は夫から慰謝料を請求される可能性があります。離婚の際の慰謝料は女性がもらうもの、とは限らず、あくまで婚姻関係を不法行為によって破綻に至らしめた者が他方に支払うものだからです。

金額としては数十万円から300万円程度のケースが多いですが、金額が個別の事情によって異なるだけでなく、そもそも夫が、慰謝料が発生することすなわち慰謝料の原因となる事実(不貞行為やDVなど)を認める(もしくは認めざるを得ないだけの証拠を確保している)見込みがあるか否かということを事前に検討すべく、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

関連記事:不倫・浮気による慰謝料請求の流れ│事実確認・証拠収集、請求相手の特定、請求方法など

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(6)年金分割

年金分割とは、夫の厚生年金、共済年金等の被扶養者として加入していた時期がある場合、対象期間に納付された保険料の一定割合を女性が納付したものとする制度です。

離婚を考えている女性としては、ご自身が年金分割の対象になるか、具体的な手続きをどうすべきかを確認するとともに、夫の側で「年金分割とは将来自分に支給される年金の2分の1が元妻に分与される」といった誤解を招きやすいところでもありますので話し合いをする前提として正確な知識を身につけておくことが重要です。

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4 緊急の手続きの検討を要する場合

ここまでお読みいただいたことは、これから離婚を申し入れよう、あるいは離婚を申し入れられてどうしようか、と考える際に、検討・確認していただきたいことでしたが、DVや子どもへの虐待、あるいは夫が子どもを連れ去ってしまった、など、緊急性を要する事態において考えられる法的手続きについてご説明します。もちろんそういった場合には弁護士だけでなく、ご自身及び子どもの安全を確保するという観点から、早急に警察や自治体の相談窓口などあらゆる機関への相談をご検討いただく必要があります。

(1)DV防止法に基づく保護命令

配偶者から身体に対する暴力等を受けた被害者が、さらなる暴力等によってその生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(通称:DV防止法)に基づき、地方裁判所に対して、保護命令を申し立てることができます。

法律上定められた要件を充たしていると認めた場合、地方裁判所は、加害者に対して、保護命令を申し立てた人への接近を1年間禁止し、必要があれば申し立てた本人だけではなく子どもや親族を含めて接近や電話等による接触も禁止するといった内容の保護命令を発令できます。さらに必要が認められれば、申し立てた人が安全に荷物を持ち出して引越しできるよう、加害者に対して同居している住居から2カ月間退去することを命じることができ、加害者がこれらの保護命令に違反すると刑事罰が下されます。

そしてこの保護命令を申し立てるには、原則として警察または配偶者暴力相談支援センターへの事前の相談が必要です。

夫からのDVにお悩みの女性の中には、離婚後の生活だけでなく離婚に向けた協議をすること自体への不安から、外部への相談に躊躇されている方もいらっしゃるかと思いますが、安全を確保するという観点から、まずは早急に身の回りの方や、警察、配偶者暴力相談支援センター、弁護士に相談して、ご自身の置かれている状況を客観的に見つめ直す機会をもつべきだと思います。

裁判所:保護命令(DV事件)

内閣府男女共同参画局:配偶者暴力相談支援センター

(2)子の引渡し

例えば、女性が離婚協議を申し入れて子どもを連れて別居し始めたところ保育園や学校に通っている子どもに夫が声をかけて自宅に連れて帰ってしまったり、夫が女性を自宅から追い出して子どもと引き離されたりしてしまう、といったことも起こりえます。そういった場合に、子どもを連れ帰るために実力行使するのは違法な自力救済にあたり親権(監護権)の判断において不利になりかねないだけでなく場合によっては未成年者略取・誘拐罪にあたりかねません。それだけでなく、実力行使により子どもを取り返すと、そういった子どもの奪い合いが何度も繰り返されるおそれもあり、子どもが親の身勝手な行動で何度も環境が変わって大きな負担となりかねません。

もちろん、それ以前に夫が子どもを連れ帰ってしまったことも、その態様如何によっては未成年者略取・誘拐罪にあたりえますから、まずは警察への相談を検討すべきですが、離婚の成立前で夫も親権者なのですから警察への相談だけで簡単に解決できることは稀だと思われます。

しかし、離婚が成立するまで話し合いを続け、子どもの親権(監護権)について決着がつくまでの間、ずっと夫に子どもを連れ去られたままでは、子どもの生活に大きな支障をきたすおそれもあり、放置しておくわけにはいかないでしょう。

こういった場合には、子の監護者指定・子の引渡しを求める審判及びその保全処分を家庭裁判所に申し立て、できるだけ早期にかつ適法に子どもを連れ戻すことを検討する必要があります。

具体的にどのような場合に子の監護者指定・子の引渡しを求める審判及びその保全処分が適切な手段といえるか、スムーズに申し立てを行うためにはどのような主張を行うべきか、ということを早急に弁護士に相談することをお勧めします。

5 まとめ

以上のとおり、女性の離婚は、夫に対して離婚を求めることを検討しだした段階(もしくは夫から離婚を申し入れられた直後)から、個別具体的な事例に応じた最適の手段を検討する必要があるため、弁護士に早期に相談することが望ましいです。

G&Sでは、協議離婚から裁判離婚までの流れを踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて離婚をサポートします。離婚・男女問題については、G&Sまでお気軽にご相談ください。

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弁護士法人G&S法律事務所

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