示談交渉中の方
交通事故による治療が終了すると、保険会社と実際の損害賠償(補償)の金額について交渉が開始されることになります。しかし、保険会社の提示金額は本来、裁判で認められるべき金額よりかなり低額となっており、そのまま同意してしまうことは非常に不利益な結果となってしまいます。以下では、交通事故の示談交渉において注意するべき事項などについて解説いたします。
目次
1 示談提示
交通事故の治療が終了すると、保険会社から補償金額の打診があることが一般的です。これを「示談提示」といいます。
一度、示談書に捺印して保険会社に返送してしまうと、後でより多くの補償を受けることが可能であったと分かったとしても、予期していなかった後遺症が発生したような例外的な場合を除き、原則として後から金額を変更することは困難となります。
そのため、示談に応じる前に、提示された金額が適切なのかどうか、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
2 三重の基準
自賠責保険から支払われる保険金や、保険会社から最初に提示される示談金額は、法的に認められるべき金額(「裁判所基準」又は「弁護士基準」といいます。)よりも低い場合が多いです。特に、後遺障害が残るケースでは、その差額は無視できない金額となることがあります。
例えば、交通事故で会社等を休んだ場合の休業損害は、自賠責基準では1日6,100円が限度とされていますが、裁判所基準では被害者の給料の1日当たりの金額を支払うこととされています。収入が年間約400万円ある場合には、1日約15,000円を請求することができる計算となります。
また、裁判所基準では、主婦であっても、家事を休まざるを得なかった分に対して、1日約10,000円を請求することができます。
加えて、後遺障害等級の中で最も軽度の14級に認定された場合、自賠責基準では後遺障害慰謝料は32万円とされていますが、裁判所基準では110万円を請求することができるとされています。
加害者側の保険会社によりますが、保険会社から最初に提示される示談金額は、この自賠責基準によるものか、又は裁判所基準よりも低い金額に抑えられていることが多く、交渉を行っても、裁判所基準の8、9割程度に抑えられ、これ以上の増額には交渉段階で応じられないとされる場合が多いです。
3 裁判所基準に近づける方法
補償額を裁判所基準に近づけるための方法としては、第三者機関である交通事故紛争処理センター(紛セン)を利用することが考えられます。保険会社等は、紛センの審査会の裁定を尊重することになっているためです。
もっとも、紛センを利用する場合であっても、審査で適正な補償を受けるためには、自らケガや損害に関する資料を揃え、書面で適切な主張を行う必要がありますが、自らこのような資料・書面の準備を行うことは現実的ではありません。
そこで、補償額を裁判所基準に近づけるためには、専門家である弁護士に依頼し、裁判所基準に基づく示談をするよう交渉するとともに、必要に応じて、裁判などの法的措置を取ることが重要となってきます。
なお、具体的な交通事故の損害賠償(補償)の金額の算定方法等については、「交通事故の損害賠償」や「慰謝料の計算方法」をご覧ください。
4 まとめ
以上のとおり、交通事故の示談において保険会社の提示金額のまま同意してはいけないことがお分かりいただけたものと思います。当事務所では、交通事故に関する損害賠償についての交渉も対応しておりますので、保険会社からの提示金額に疑問の方はお気軽にご相談ください。