男性の離婚問題・離婚相談

『離婚』とひとくちに言っても、男性と女性では、考え方、将来の設計が異なります。

特に、子どもがいる場合、離婚後どちらが子育てをしていくかで対立することが多いほか、養育費など、離婚するに際して夫婦で話し合って決めなければならないことがあります。

また、財産分与や年金分割など、男性と女性で対立が生じやすいポイントも多いです。

しかし、離婚に関する情報は、女性側の視点のものが多く、男性向けの情報が不足しています。

本コラムでは、男性側の視点に立って、男性のための離婚に関わる問題などについて、離婚・男女問題に関して経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。

目次

1 男性が離婚する理由

裁判所の統計によると、男性が離婚調停の申立時に選択した、離婚を希望する理由の上位5つは、以下のとおりです。

  1. 性格があわない
  2. 精神的に虐待する
  3. 異性関係
  4. 浪費する
  5. 家族親族と折り合いが悪い

最高裁判所事務総局:令和6年 司法統計年報 3家事編

これを見ると、離婚を希望する理由の1位は、「性格が合わない(性格の不一致)」、2位は「精神的に虐待する」と、妻との心理的なすれ違いや、妻からの精神的な圧力が離婚に至る理由の大きなものであることがわかります。3位は「異性関係」(妻の不貞行為等)ですが、4位は「浪費する」となっており、金銭的な問題も離婚に至る大きな理由になることがわかります。

2 離婚における男性側の留意点

一般的に、離婚は男性側が不利といわれることが多いです。

その理由は、離婚に関する情報が、女性側の視点のものが多く、男性向けの情報が不足していることが一つの要因となっています。しかし、それだけではありません。

夫婦が離婚に向けて別居した場合、離婚が成立するまでの間、毎月、双方の収入に応じた一定の生活費を支払う必要が生じます。これを婚姻費用といいます。

男性が主に仕事をして稼ぐ一方で、女性が家庭内の家事や育児を主に分担するという古典的な家族が離婚に向けて別居した場合、男性は別居しても直ちに収入は変わらない一方で、女性は育児の負担を抱えながら収入を新たに確立しなければならない負担を負うことになります。また支出の面でも、同居していた間は男性が負担していた家賃(住宅ローン)、水道光熱費、食費などといった生活費が女性の側にも別途必要になります。そうした非対称性を考慮して、男性の方が女性よりも収入が多い場合、別居を開始した後、離婚が成立するまでの間は、男性が女性に対して生活費として一定の費用(婚姻費用)を支払う必要があり、男女の収入差が大きいほど、男性が支払う金額は大きくなります。

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また、令和8年4月1日施行の改正民法により共同親権が導入されますが、実際にどちらの親が子どもと一緒に暮らすのか判断しなければならない場面において、特に子どもが小さい場合は母親が優先される場合が多いほか、女性が家庭内の家事や育児を主に分担していた場合、女性の方が子どもと一緒に暮らすのにふさわしいと判断されることが多くなります。

さらに、男性が子どもと一緒に暮らさない場合は、離婚後、子どもが一人前になるまで、養育費を支払う必要が生じます。

他にも、財産分与、年金分割などで、男性が主に仕事をして稼いでいる家庭では、男性が女性に渡すものが大きくなりがちです。

3 男性側からみた離婚戦略

前述のとおり、別居を始めると婚姻費用を毎月支払わなければならない男性としては、離婚手続きの種類と流れをふまえて、離婚が成立するまでの間はその負担が続くということを前提に戦略を立てる必要があります。

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(1)妻から離婚を求められたとき

ア 離婚に応じないとき

離婚に応じるつもりがない場合妻との関係を修復して同居を再開するまでの間、婚姻費用を支払い続けなければなりません。

婚姻費用を一切支払わない状態が続くと、そのこと自体が「悪意の遺棄」や経済的DVとして「婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚原因と判断され、妻が離婚を求めてきた理由にかかわらず、離婚の判決が下されるおそれもあります。

そのため男性は、できるだけその金額は低く定めるべく慎重に協議したいと思うでしょう。

しかしながら、婚姻費用はまさに別居を開始したその日から必要になる生活費に充てられるものですから、当事者間での協議がまとまらず裁判所での調停・審判となった場合は、裁判所が、統計資料に基づいて、双方の収入をもとに、ある程度、機械的に算出した金額の支払いを命じる運用がなされています。

したがって、単に同居中の生活水準やかかっていた費用などをもとに妥当な金額はいくらだ、とか、妻側の主張する金額について不要なほど高額である、などとだけ主張するのではなく、裁判所での運用及び判断枠組みを前提として、有効な主張を検討しなければなりません。

また、慎重に協議する土俵を作るために、協議がまとまった時点で過不足を清算することを前提として早期に一定の金額を婚姻費用として仮払いし始める、という方策も有効です。

イ 条件次第で離婚に応じるとき

妻からの離婚の求めに対し、条件次第で応じてもよいと考えている場合も、離婚が成立するまでの間は、婚姻費用を支払わなければならないので、財産分与や慰謝料といった親権及び養育費以外の離婚に関する条件については別途協議することとして、離婚を先行して成立させるということが考えられます。財産分与や慰謝料について合意できないと離婚できないわけではなく、財産分与や慰謝料については、離婚成立後でも交渉が可能だからです(これに対し、未成年の子どもがいる場合の親権者についてだけは、離婚時に双方又は一方に決めておかないと離婚が成立しません(民法819条1項))。

もっとも、妻側に早期に離婚を成立させたい事情(感情の問題の他、例えば離婚と共に転居や転職、子どもの転校を考えている場合や別の人と再婚したい場合等)がない場合、妻側としては、離婚後の生活を懸念して財産分与や慰謝料といった全ての条件をまとめるのと同時に離婚を成立させたいと考える場合が多いと思います。

その場合は、折り合いがつかない条件について、調停・審判・訴訟に至った場合に有利な事情と不利な事情をふまえた正確な見通しをつけ、それらの手続に要する期間に支払わなければならない婚姻費用を冷静に比較して協議を進めていく必要があります。

(2)妻に離婚を求めるとき

男性の側から妻に離婚を求めるときも同じように、離婚が成立するまでの間は婚姻費用を支払い続けなければならないということが問題となります。

そもそも離婚を申し出られた妻側からすれば、正式に離婚するまでの間は婚姻費用を受け取り続けることができるので、早期に離婚を成立させたいという事情(前述のとおり)がない限り、離婚協議が多少長引いても(さらに言えば離婚協議がまとまらなくとも)問題はなく、納得のいく条件を得られるまで絶対に離婚には応じず、じっくりと話し合おうと考える傾向にあります。もちろん、よく話し合ってお互い納得のいく条件で離婚することが、互いのこの先の人生において有意義であることは言うまでもありませんが、突然、離婚を求められて動揺したり、感情的になったりしてしまったために生産的な協議ができなくなってしまって、ただ徒に婚姻費用を支払う期間が長引いてしまう、ということもあり得ます。

さらに、中には、敢えて離婚協議を長引かせて婚姻費用を払い続けさせようなどと考えている場合もあるので注意が必要です。

この婚姻費用の問題に対応するためには、早期に離婚を成立させられるよう、まず誠実に協議をする姿勢を示し、協議が整わない場合には粛々と調停・訴訟の手続を進めることを検討することが必要です。

4 夫婦の一方が有責配偶者の場合

(1)有責配偶者とは

有責配偶者とは、専らまたは主として離婚の原因を作り、婚姻関係を破綻させた配偶者のことをいいます。

一般的にいう離婚の原因を作った者、すなわち不仲になるきっかけや経緯を分析してその責任がある一方を指すものではありません。それを作ることにより、法律上、有責配偶者とされる「離婚の原因」とは、原因を作った側が離婚を拒否したとしても強制的に離婚が認められる程度に強い要因、すなわち、裁判上の離婚が認められる場合(民法770条1項各号)とおおむね一致すると考えてよいでしょう。代表的なものとして、不倫や、DVなどが挙げられます。

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(2)妻が有責配偶者の場合

妻が有責配偶者の場合は、妻が離婚を拒否し続けていても、協議・調停を経た後の離婚訴訟において、裁判所に妻の有責行為によって婚姻関係が破綻したことを認めてもらえば、離婚を成立させる判決を下してもらうことができます。

そのため、妻が有責配偶者であることの証拠、すなわち不倫やDVの証拠を確保したうえで、離婚を前提として(または離婚を思い留まる代わりに)、慰謝料等を求めることが考えられます。また、不倫の場合は、妻のみではなく、その不倫相手に対しても慰謝料の支払いを求めることが考えられます。

(3)夫が有責配偶者の場合

男性自身が有責配偶者の場合は、男性から離婚を請求したとしても、原則として裁判上の離婚は認められません。

例外的に別居期間が長期間に及んでいて未成熟の子どもがいない夫婦が、離婚することで配偶者が生活に困らないよう十分な保障をする場合であれば、有責配偶者からの離婚請求が裁判上で認められる余地があります。

婚姻期間にもよりますが、概ね、7年~10年以上別居していれば、長期間の別居と認められるケースが多いといわれています。

もちろん、裁判上の離婚が認められない場合であっても、相手が離婚に応じれば即座に協議離婚することができるため、他の条件はともかく、まずは離婚に応じてもらうことを優先して交渉することが重要となります。

したがって、将来的な裁判上の離婚を見据えて別居期間を積み重ねつつ、並行して妻との交渉により離婚届への押印を得られないか試みることになります。

5 慰謝料について

(1)慰謝料請求ができるケース

有責配偶者の不法行為によって婚姻関係が破綻して離婚に至った場合、その精神的苦痛を慰謝するための慰謝料を請求することができます。

稀にある誤解として、「男性が離婚をするには慰謝料を払わなくてはならない」「女性が離婚を要求すると慰謝料請求ができない」「慰謝料は男性が払うもの、女性は受け取るもの」だと誤解されていることがありますが、そのようなことはありません。相手が有責配偶者であれば請求でき、自分が有責配偶者であれば、請求に応じる必要が生じます。つまり、男性が不貞行為や暴力(DV)をした場合に女性が夫に対して慰謝料を請求できるだけでなく、女性が不貞行為や暴力(DV)に及んだために離婚を余儀なくされた場合は、男性が妻に対して慰謝料請求をすることができます。

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(2)慰謝料請求をするには

慰謝料を支払ってもらうには、不法行為の事実を立証する証拠が必要となります。

例えば、相手に不貞行為があった場合は、不倫相手と肉体関係があったことがわかる写真・動画や、暴力(DV)を受けた場合は、暴力されてできた外傷の写真や医師の診断書が証拠となります。

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(3)請求できる金額

相手に請求できる慰謝料の金額は、不法行為の悪質さによって異なりますが、不貞行為で離婚に至った場合、100万円から300万円程度の金額が慰謝料の金額となることが多いです。

暴力(DV)の場合は、暴力を原因として離婚せざるを得なくなったことに加え、ケガをさせられたこと自体についても慰謝料が発生する場合があるので、数十万円から、ケガの重さによっては数千万円になる場合もあります。

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6 財産分与について

(1)財産分与とは

財産分与は、離婚時に夫婦が共同で築いた財産を分割する制度です。これには、以下の3つの要素が含まれます。

  • 清算的財産分与: 婚姻中に築いた財産を分配する。
  • 扶養的財産分与: 離婚後の生活維持を目的とした金銭補充。
  • 慰謝料的財産分与: 慰謝料を含む財産分与。

2026年4月1日に施行された改正民法によって、婚姻中に夫婦で築いた財産に対する寄与が原則として相等しいこと、すなわち原則として清算的財産分与としては2分の1ずつ分け合うことが明記されました(民法768条3項)。

(2)財産分与の対象

名義に関わらず、婚姻中に取得した財産は原則として財産分与の対象です。

  • 現金や預貯金
  • 不動産
  • 有価証券(株式、投資信託など)
  • 保険の解約返戻金
  • 自動車、貴金属などの動産
  • 退職金
  • 共同生活のために負った負債(住宅ローン、学資ローンなど)

ただし、相続や贈与により取得した財産、婚姻前から所有していた財産は対象外です。

(3)財産分与における不動産・住宅ローン

負債についても、夫婦の共同生活のために負ったもの、例えば住宅ローンなどは財産分与の際に考慮され、​住宅の価格からローンを差し引いた残額を分配する形となります。ローンの額が住宅の売却価格を上回る場合(オーバーローン)は、他の財産とは通算せず、0円として査定することが多いです。

住宅を引き受ける側が離婚後に残っている住宅ローンを支払っていくべきと思う方も多いでしょうが、住宅ローンの支払義務者の変更は夫婦間だけの問題ではなく、住宅ローンを貸し付けた銀行の承諾が必要です。

主な家計の担い手が男性である夫婦の場合、不動産の名義も住宅ローンの名義も男性であることが多いと思いますが、就学中の子どもがいるなどの事情から離婚後も子どもの面倒を見ていく妻が住宅に住み続けることを希望することも多いでしょう。その一方で家計を男性が主に担っていた場合、妻の側で経済的な信用力(収入、就労年数、就労形態等)が乏しく、住宅ローンの支払義務者を変更することについて銀行の承諾が得られないことも多いと思われます。

こういった、夫婦間の協議だけでは決着をつけられない問題について、個別具体的な事情を踏まえて、現実的な解決方法を提示しながら双方にとって納得のいく条件を取り決める必要があります。

(4)現金化が困難な財産がある場合の財産分与

その他、気を付けなければならないのは、即座に現金化することが困難な資産についても財産分与の対象とされることです。

ア 自身の経営する会社の株式(社員権等を含む)

株式会社を経営する男性が離婚する場合、個人として保有している、自身が経営している会社の株式(一般社団法人などの場合は社員権)も財産分与の対象となります。

離婚後も会社の経営を安定して続けていくためには、離婚により他人になる妻に財産分与として保有する株式の2分の1を譲るのではなく、これに相当する金額を支払うことを検討する必要があります。その際に、株式の評価、さらに支払方法やその原資の調達方法などの問題点について、妻側の意向(主張)と合意ができなかったときに裁判所で下される判決の見通しなどをふまえて、合理的な提案をしなければなりません。

さらに会社の事業所として利用している建物の敷地が個人の名義である場合など、会社の事業に利用している資産であっても名義が個人である以上、財産分与の対象となります。

このように会社(法人)を経営する男性が離婚する場合には、離婚後の会社の経営も見据えて協議を進める必要がありますので、個別具体的な事情を踏まえて適切な方針をたてる必要があります。

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イ 退職金

退職金支給規定のある会社にお勤めの男性の場合、離婚に向けて別居した時点での退職金の見込み額が財産分与の対象となります。

退職金が実際に支給されるのは将来退職した時で、現に手元に存在するお金ではないので、財産分与の対象として見落としがちなので注意が必要です。

(5)財産分与の請求期間

財産分与は、離婚が成立する前、すなわち離婚を成立させるときに財産分与について取り決めなければならないものではありませんが、離婚成立から5年以内(民法768条2項)に財産分与を求める旨の請求を行う必要があります。

​また、不動産など特定の財産を分与する際には、譲渡所得税などの税務面への配慮だけでなく、名義移転に関する登記手続や登録免許税が発生する可能性があるため、当事者間で財産分与として取り決めたことを実施するのにかかるコストと具体的な手続きについて事前に確認が必要です。

(5)財産分与は財産の把握が大切

適切に財産分与を行うには、共有財産をリストアップし、不動産などの評価が必要な財産については正確に査定を行うことが大切です。お互いにほしい財産について希望を出し合い、それを実現するためにどういった調整が必要か、ということについて生産的な協議を行わなければなりません。

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7 子どもの親権について

(1)親権とは

親権とは、親が子どものために監護・教育を行なったり(身上監護)、子供の財産を管理したり(財産管理)する、親の権限・義務のことです(民法820条)。

子どもがいる場合、離婚する際には父母の双方もしくはどちらかを親権者として定める必要があります。

協議離婚の場合には、夫婦の協議で親権者を父母の双方もしくはそのどちらかに決めます(民法819条1項)が、協議で決められない場合は、調停等で裁判所に介入してもらい、親権者を決めることになります。裁判所が(単独)親権者・監護者を決める際には、子どもの利益を最優先に考えなければなりません(民法766条1項、同条2項)。経済状況、育児への関与、子どもの意思などを総合的に考慮して判断されます。

(2)親権者・監護者を決める5つの要素

2026年4月に施行された改正民法では、離婚後も父母の共同親権が認められました(民法819条)が、共同親権の場合であっても、今度は、父母どちらが実際に子どもを養育するか、という監護の問題が生じます。

親権者もしくは監護者を決める際、15歳以上であれば子の意見を聞いて決めなければならないとされていますが、それ未満の年齢でも、子どもが会話できる年齢であれば、その意見が尊重されることが多いです。

子どもの意向以外の考慮要素として、以下の5つが挙げられます。上の要素ほど優先して考慮される傾向にあります。

  1. 監護の継続性
  2. 子の監護状況
  3. 母性優先
  4. 兄弟姉妹不分離
  5. 監護開始の際の態様

(3)男性が(単独)親権者・監護者となるためのポイント

男性が(単独)親権者・監護者となる上で特に意識しなければならないのは、3番目に挙げられた「母性優先」の原則の存在です。概ね5歳以下の幼児の場合、一般に母親が優先的に養育することが望ましいと考えられています。それ以上の年齢でも、1番目、2番目に挙げられた要素で優劣つけがたい場合は、母親が優先される可能性が高いです。

そこで、男性が(単独)親権者・監護者になるには、母性優先の原則よりも考慮度の高い1番目、2番目に挙げられた要素、つまり「監護の継続性」と「子の監護状況」において、子どもの利益を考慮すると父親の方が望ましいと裁判所に認められることが目標となります。

「監護の継続性」とは、父親を(単独)親権者・監護者にしたときに、裁判所介入時点で実際にある子どもの居住、養育、通学等の生活状況が変わらないかどうかをいいます。子どもの生活状況がなるべく変わらず安定して継続していることが望ましいためです。

「子の監護状況」とは、父親がそれまでどれくらい育児を担ってきたか、(単独)親権者・監護者になった場合に子どもを無事に育てていけるかをいいます。父親が仕事等で家を空ける時間が多い場合には、父親の親族などの育児協力が十分に得られるか、それまで実際にどれくらい育児に協力してきたかも考慮されます。

反対に、「母親の経済力が乏しい一方で父親は子どもを監護するのに十分な経済力があり、経済的な側面から、子どもの監護は父親が担うべきである」というような主張は、裁判所では養育費を十分に受け渡せば解決する問題と考えられがちで、子どもの利益を考慮する上では、決定的な主張になりえません。

(4)男性が(単独)親権・監護権を得るには

そのため、男性が(単独)親権・監護権を得るには、子どもの生活状況が変わらないように、離婚調停を申し立てる時点で子どもを自分の手元で安定して育児している状態にまでしておくこと、また、普段から子どもの育児を積極的に行っていること、親族の援助を含めて母親がいなくても十分に育児できる環境を整えておくことが大切となります。

(5)面会交流について

面会交流とは、離婚後、監護者にならなかった親(非監護親)と子どもとが、面会したり、電話・メール・文通したりするなどの、交流のことです。

前述の通り、監護権を男性が獲得するのは難しい場合が多いので、面会交流をいかに充実させられるか、ということが、男性が離婚協議において重視する条件の一つになることがあります。

もっとも、離婚する際に面会交流についてルールを明確に取り決めなくとも、適宜、子どもの意向を中心に両親が調整して、子どもが非監護親と自由に面会交流できるのであれば、一つの理想形でしょうし、子どもの成長によって面会交流の内容も変わっていくことを考えると、面会交流の頻度や内容を厳密に定めることにどこまでこだわるべきか、というのは個別具体的な事情を踏まえて、冷静な検討が必要です。

その一方で、現に子どもを監護している母親の影響を受けたり、母親の意向を慮ったりした子どもが、非監護親の父親との面会を拒絶する態度を示して、そのような子どもの態度を盾に面会交流を拒絶されるというケースも珍しいものではありません。こういった場合には面会交流調停を申し立てて裁判所の適切な指揮の下、面会交流に関するルールを決めるための協議を進めつつ、試行的面会交流の実施家庭裁判所調査官による調査によって子どもの真意を明らかにすることを検討しなければなりません。

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8 養育費について

(1)養育費とは

養育費とは、子どもが自立した生活を行なえるようになるまでの間、子育てにかかる費用を分担するため、子どもを養育していない親が、養育している親に対して毎月一定額を支払うものです。具体的な金額は協議離婚をする際に話し合って決めることとされており(民法766条1項)、話し合いがまとまらない場合には裁判所が定めることができます(同条2項)。

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(2)元妻が子どもを育てる場合

元妻が子どもを養育する場合、男性は、子どもが就職等で経済的に一人立ちする年齢まで、養育費を支払う義務があります。

養育費の金額は、協議が整わず、裁判所における調停・審判となった場合、統計資料をもとに双方の収入に応じた相当な金額を算出した裁判所の「養育費算定表」を参考に、個々の事情を照らし合わせて決定するので、調停に至る前もこれを念頭に協議します。現に子どもの養育に要している費用を単純に積み上げていった金額が、裁判上も相当な金額であると認められるものではないので、元妻がそういった主張をしている場合には注意が必要です。

また、毎月の定額の養育費だけではなく、突発的な支出(特別費用。例えば大きなけがや病気の際の医療費や進学・海外留学の費用など。)の精算方法についても事前に取り決められるものは取り決めておくとよいでしょう。

裁判所:平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

(3)自分が子どもを育てる場合

一方、男性が子どもを育てる場合、もし元妻の方が収入が少なくても、いくらかは養育費を受け取ることができる場合もあります。

養育費は子どものための権利ですので、男性は元妻に請求できない、という性質ではありませんし、請求をためらう必要もありません。

9 まとめ

以上のとおり、男性側からの離婚は難しい問題が多く、妻に対して離婚を求めようと検討している段階から、もしくは妻から離婚を求められた場合は即座に、個別具体的な事例に応じて、弁護士の判断を仰ぎ、適切な方針をたてて進めていくことが望ましいです。

G&Sでは、協議離婚から裁判離婚までの流れを踏まえて、経験豊富な弁護士が個別具体的な事情に応じた最適な方法を考えて離婚をサポートします。離婚・男女問題については、G&Sまでお気軽にご相談ください。

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