医師・医者等の残業代請求|対象となる労働時間・請求方法などを弁護士が解説
医師(医者)や看護師などの医療従事者は、職業としての専門性の高さから、各人に与えられる裁量が大きいため、労働者としての地位が見過ごされてしまいがちです。
また、医療現場の特殊性から、夜勤や宿日直により拘束時間が長くなりがちであり、オンコールなど医師特有の制度もあることから、適切な労働時間の管理が行われず、法律上は、残業代が支給されるべきであるにもかかわらず、残業代が未払いである例が多く見受けられます。
さらに、医師(医者)を管理監督者として扱っていること、年俸制や固定残業代の中に残業代が含まれていることを理由に、適切に残業代が支払われていない例も見受けられます。
本コラムでは、病院やクリニック等で勤務している医師や看護師等の医療従事者による残業代請求について、労働問題及び医療法務に関して経験豊富な弁護士が、重要なポイントを解説します。
目次
1 医師(医者)にも残業代は発生する
医師(医者)であっても、医療機関に雇用されている場合、後述のとおり一般的には労働者に該当すると考えられるため、残業代が発生します(労働基準法37条)。
なお、残業代(時間外労働手当)については大きく次の3種類に分けることができます。
- 時間外労働の残業代
- 「1日8時間、1週40時間」(法定労働時間)を超える労働に対しては、通常の給料の1.25倍以上の割増賃金となります。
- また、時間外労働が、月60時間を超える場合は1.5倍以上の割増賃金となります。
- 休日労働の残業代(休日手当)
- 「1週1日または4週4日」の休日(法定休日)を超える労働に対しては、通常の給料の1.35倍以上の割増賃金となります。
- 深夜労働の残業代(深夜手当)
- 深夜時間帯(午後10時から翌午前5時まで)の労働に対しては、通常の給料の1.25倍の割増賃金となります。
- なお、時間外又は休日の深夜労働に対しては、それぞれの割増率が合算された割増賃金となります。
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2 医師(医者)の労働者性
(1)労働者とは
「労働者」とは、①事業に使用される者で、②賃金を支払われる者をいいます(労働基準法9条)。
事業に使用されるとは、使用者の指揮監督を受けて働くこと、賃金とは、労働の対償として使用者が支払うすべてのもの(労働基準法11条)を意味します。
そして、「労働者性」の有無については、①指揮監督下の労働という労務提供の形態、及び②報酬が提供された労務に対するものであるかどうかという報酬の労務に対する対償性の観点から、諸要素を総合的に考慮して判断されます。なお、この2つの基準は総称して、「使用従属性」と呼ばれます。
(2)医師の労働者性
ア 研修医の場合
臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有していることから、研修医は、労働者に該当するか過去に争われた例があります。
ただ、広く、研修医は労働者に該当すると考えられており、判例も、研修医は病院開設者の指揮監督の下に、労務(医療行為等)に従事し、その対価として報酬(奨学金)を受けていると評価できるとして、労働者に該当すると判断しています。
| 最判平成17年6月3日民集59巻5号938頁 |
|---|
| 「臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している」と述べた上で、「研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たる」と判示した。 |
イ 勤務医の場合
医師(医者)の場合、その職業柄、業務遂行にあたって、一般的な労働者と異なり、使用者である医療機関から具体的な指示を受けていないことが多く、そのため、労働者に該当しないのではないかという疑問を持たれることがあります。
もっとも、一般的な勤務医は、勤務時間・場所の時間的拘束があり、他方で、業務遂行にあたって具体的な指示を受けていなかったとしても、それは医師という高い専門性を有する職務のためといえるため、一般的に労働者に該当します。
裁判例においても、勤務医の労働者性が争われた事案で、「原告の診療行為に当たっての被告から原告に対する指示は,抽象的なものに留まっており,具体的な指示はされていないが,これは医師という高い専門性を有する職務のためということができるし,一般の勤務医であっても,同様といえ」ると述べたものがあります(東京地判平成25年2月15日)。
ウ 理事長・院長の場合
病院等の開設者が医療法人の場合、病院等の管理者を法人の理事にしなければならないため(医療法46条の5第6項)、医師が、病院等の管理者としての地位と医療法人の業務執行機関としての理事の地位を併有することがあります。問題となるのは、典型例として、医療法人が分院を開設する際に、もっぱら分院の診療のみを行うものとして院長(理事)職に就任する場合(いわゆる「雇われ院長」の場合)のように、形式上は理事の地位にはあるものの、診療に従事しているだけで、医療法人自体の経営については関与していない医師の労働者性です。
この場合、当該医師が行う診療行為に着目すると、診療行為それ自体は、理事としての職務とは性質を異にするものであり、理事や理事長としての委任契約に当然に随伴するものとはいえません。そのため、医師として診療行為を行うことを内容とする契約について、実質的な使用従属の程度や当事者の認識、その他の事情を勘案し、診療行為が一般的な勤務医のそれと異ならない場合には、院長といえども労働者に該当します。
医療法人の理事長の労働者性が争点となった事案で、「医師としての診療行為は、理事としての職務とは性質を異にするものであり、理事や理事長としての委任契約に当然に随伴するものとはいえないから、それ自体、いかなる法的関係に基づいて行われているかを個別に検討する必要がある」と述べた裁判例があります(大阪地判平成30年3月29日)。
エ 医療従事者の場合
業務委託として契約した看護師及び介護ヘルパーの労働者性が争われた事案において、労働者性を肯定した裁判例があります(大阪地判平成27年1月29日労判1116号5頁)。
一般的に、医療従事者は、医師や上司である看護師の指示の下で業務を遂行し、勤務場所や勤務時間に関して拘束されていることがほとんどであるため、労働者性が問題となる事案は多くないように思われます。
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3 残業代の対象となる労働時間
(1)労働時間の判断基準
労働基準法における労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの拘束時間から休憩時間を除いた実労働時間をいい、現実に作業に従事している時間のみならず、手待時間(作業と作業との間の待機時間)も含まれます。
判例上、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に判断されます(最判平成12年3月9日民集54巻3号801頁(三菱重工業長崎造船所事件))。
なお、厚生労働省のガイドライン(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)においても、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間」をいうと記されています。
(2)始業時刻前の準備行為
所定始業時刻前の準備行為については、一般に、それが事業所内で行われることが使用者によって義務付けられ、又はこれを余儀なくされたものであれば、労基法上の労働時間に該当します(前掲最判平成12年3月9日)。
例えば、交代引継ぎ(申し送りの際のミーティング)や更衣の時間については、業務上必要であり、義務付けられているため、多くの場合に労働時間に該当すると思われます。
(3)移動時間
移動時間の労働時間該当性の判断について、睡眠や読書をするなど、その時間を自由に利用することが認められているか否かが判断のポイントとなります。
そのため、訪問診療時に、病院から患者宅への移動や患者宅から次の患者宅への移動については、業務提供のために必須の行動であり、医療機関からまさにそのような移動をするよう指示があり、労働者である医師はその義務を負っていると評価できるため、労働時間に該当すると思われます。
(4)仮眠・休憩時間
夜勤とは夜間に通常業務と同様の業務を行うものをいい、宿日直とは業務を行うことを予定しているか否かという点で区別されることが一般的です。
夜勤・宿日直において、実作業に従事していない仮眠・休憩時間が取られている場合、仮眠・休憩時間が労働時間に該当するか問題となります。
仮眠・休憩時間とされている時間帯であっても、例えば、仮眠室での待機と緊急時の対応を義務づけられており、断続的な業務の実態があるなど、使用者の指揮監督下からの解放がないと評価される場合には、労働時間に該当し得ます。
看護師の仮眠・休憩時間の労働時間該当性が争点となった裁判例(東京地判平成17年8月30日労判902号41頁)において、「ナースコールに対して仮眠・休憩時間でない看護職員だけでは対応ができないときや、起きている職員だけで対応できないような事故が発生したとき等、場合によっては、仮眠を中断して対応しなければならず」、「仮眠時間は労働からの解放が保障されているとはいえ」ないと判断したものがあります。
(5)医師の研鑽
医療従事者は専門職であるところ、日々の研鑽が重要とされ、勉強会や学会、手術・処置等の見学に参加する機会も多いと聞きます。このような自己研鑽の時間は労働時間に該当するのでしょうか。
この点、厚労省の通達(医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について)によると、一般的な考え方としては、ⅰ所定労働時間内に使用者に指示された勤務場所(院内等)において研鑽を行う場合については、当該研鑽に係る時間は労働時間に該当するのに対し、ⅱ所定労働時間外に行う医師の研鑽については、診療等の本来業務と直接の関連性はなく、かつ業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(上司)の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、労働時間に該当しないとの見解が示されています。
つまり、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われる場合であっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われる場合であっても、一般的に労働時間に該当することになります。
| 所定労働時間内の研鑽 | 一般的に労働時間に該当する | |
|---|---|---|
| 所定労働時間外の研鑽 | 上司の明示・黙示の指示がない場合 | 一般的に労働時間に該当しない |
| 上司の明示・黙示の指示がある場合 | 一般的に労働時間に該当する | |
(6)宿日直
当直とは、所定労働時間外に通常労働とは異なる業務を行う勤務形態のことをいい、そのうち、日直とは、日中に行う当直をいい、宿直とは、宿泊を伴って行う当直をいいます。
医師や看護師の宿日直勤務では、多くの場合、待機・監視などの業務を行うとともに、入院患者の急変や急患があれば対応することが予定されているところ、通常、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるため労働時間に該当します。
もっとも、後述のとおり、宿日直のうち、通常労働とは異なる労働密度の低いものについては、継続的労働として宿日直許可を得ることにより労働時間、休憩及び休日に関する規制の適用が除外されます(労働基準法41条3号)。
しかし、宿日直許可を得ている場合であったとしても、常態として昼間と同様の勤務に従事する場合に等しいなど、実体と許可基準が乖離している場合には、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用される結果、割増賃金の支払を請求することができます。
(7)オンコール
医師については、緊急時にすぐに病院に駆け付けられるように自宅待機の時間(オンコール)が設けられる場合があります。このようなオンコールの時間について、労働時間に該当するか問題となります。
裁判例(大阪高判平成22年11月16日労判1026号144頁)には、医師間で、宿日直勤務以外に、自主的に宅直当番を定め、宿日直の医師だけでは対応が困難な場合に、宅直(オンコール)医師が病院に来て宿日直医師に協力して診療を行っていたという事案において、当該オンコール制度が医師間の自主的な取り組みであり、病院の制度として運用されていたものではなく、黙示の業務命令があったとはいえないとして、労働時間に該当しないと判断したものがあります。
もっとも、この裁判例に照らしても、当該オンコール制度が、病院の制度として運用されている場合や、呼び出しが頻繁であって、待機場所の取り決めや当該オンコール制度を守らなかった場合の制裁の有無・内容によっては、労働時間に該当すると判断される場合も十分あり得ると考えられます。
関連記事:医療機関における労働時間管理
4 医師(医者)に残業代を支払わない理由としてよくみられるもの
(1)管理監督者だから残業代が発生しない?
ア 管理監督者とは
管理監督者とは、事業の種類にかかわらず「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」をいいます。管理監督者に該当する場合は、労働基準法の労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されないため(労働基準法41条2号)、残業代は発生しません。
医療機関においては、医療法上、病院や診療所の開設者は、医師を監理者として病院や診療所を管理させなければならないため(医療法10条1項)、このような監理者を「院長」と称して労働基準法上の管理監督者として扱っている例が多く見受けられます。
イ 管理監督者該当性
では、このような「院長」を労働基準法の管理監督者として扱い、残業代などの支払いを行わないことは認められるのでしょうか。
この点、管理監督者に該当するか否かの判断については、以下の基準により客観的に判断されます。
【管理監督者該当性の判断要素】
- 経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められているか
- 出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有しているか
- 一般の従業員に比して、その地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられているか
そのため、たとえ「院長」という肩書であったとしても、病院やクリニックの運営・人事に実質的に関与することが認められていない場合、診療時間(労働時間)に裁量がなく、指示された時間の診療業務に従事している場合には、「管理監督者」とは認められず、残業代が発生することとなります。
(2)宿日直だから残業代が発生しない?
ア 断続的労働とは
宿日直の許可基準を満たし、実際に、労働基準監督署長による宿日直許可を得た宿日直業務については、「断続的労働」として「労働時間、休憩及び休日」に関する規定が適用されないため(労働基準法41条3号)、宿日直勤務の時間は労働時間としてカウントされず、宿日直手当のみの支給で足りるとされています。
しかしながら、医療機関が、宿日直勤務について労働基準監督署長の許可を得ていない場合はもとより、許可を得ている場合であっても宿日直勤務の実態が、以下の宿日直の許可基準に該当しない場合には、当該宿日直勤務の時間が全て労働時間と扱われるため残業代が発生します。
イ 宿日直業務が断続的業務とされる許可基準
一般の宿日直の許可基準としては、大まかにいえば、手待時間が実作業時間を超えるか又はそれと等しいことが目安とされ、通達(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)によって、勤務の態様、宿日直手当、宿日直の回数、及び、その他の項目に分けられて基準が設定されています。
また、別途、通達(医師、看護師等の宿日直許可基準について)によって、医師、看護師等の宿日直については、概要として、以下のとおりの許可基準が定められています。
【医師、看護師等の宿日直許可基準】
- 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。
- 宿日直中の業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。
- 一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること。
(3)年俸制だから残業代が発生しない?
年俸制とは、賃金の全部又は相当部分を労働者の業績等の目標の達成度を評価して、年単位に設定する制度をいいます。そのため、年俸制は、成果主義に馴染みやすく、年俸制は、ある程度自身の判断や裁量に基づいて成果を上げることが求められており、労働時間の量を問題とする必要がない管理監督者(労働基準法41条2号)や裁量労働者(労働基準法38条の3及び4)に適した制度とされます。
もっとも、年俸制それ自体は、賃金を年単位で定める制度にすぎませんので、年俸制であっても、時間外労働が発生した場合には、原則として割増賃金の支払いを請求できます。
(4)固定残業代だから基本給や手当てに残業代が含まれる?
ア 固定残業代(定額残業代・みなし割増賃金)とは
時間外・休日・深夜労働については、当該労働時間に応じて、割増賃金を支払うことが基本ですが、一定時間(固定残業時間)分の時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金を定額で支払うこととする労働契約を締結する仕組みを採用する場合があり、このような支給制度を、固定(定額)残業代制といいます。
しかし、固定残業代制では、あらかじめ決められた固定残業時間を超過した場合、超過分については、追加で残業代が発生することとなります。この点、固定残業代の名のもとに、適切な労働時間の管理が行われずに、固定残業時間を超える分の残業代が支払われていない事例も多く見受けられます。
イ 固定残業代の有効要件
固定残業代制が有効とされるためには、割増賃金を基本給の一部又は特定の手当として支払うことが労働契約の内容になっていること(固定残業代制の合意)に加えて、以下の要件を満たさないと無効とされています。
【固定残業代の有効要件】
- 通常の労働時間の賃金部分と割増賃金にあたる部分が明確に区分されていること(判別可能性)
- 割増賃金として支払われた賃金が時間外労働の対価としての性質を有すること(対価性)
そのため、そもそも固定残業代の有効要件を欠くため、無効であると評価される事例も多くみられるところです。
5 医師(医者)が残業代を請求するための手続き
(1)残業代を請求する方法
医師(医者)が残業代を請求する際の、大まかな流れは以下のとおりです。
- 証拠収集
- 残業代の算定(時間単価×残業時間×割増率)
- 残業代の請求・交渉
- 労働基準監督署への相談、又は、訴訟提起・労働審判の申立て
関連記事:残業代請求の方法
(2)証拠収集
残業代請求にあたっては、労働者の側で残業した事実を客観的な証拠によって示す必要があります。
勤務時間を直接的に示す証拠として、タイムカード・勤怠記録・日報等(の写し)や勤怠管理システムのデータ(を出力したもの)が考えられるほか、間接的なものとして、業務用メールの送受信記録履歴や、タクシー領収書、日記等が挙げられます。整理すると次のとおりです。
【始業・終業時刻に関するもの】
- タイムカード・勤怠記録・日報等(の写し)
- 勤怠管理システムのデータ(を出力したもの)
- 業務用メールの送受信記録履歴
- 交通機関(タクシー)の使用履歴(領収書)
- 日々の記録(日記)
また、以上のような証拠がない場合であっても、残業が指示された書面等の証拠により、残業があったことを立証することができます。また、カルテには、患者の状態とともに、担当者名、日時等が記載されるため、その時間に業務をしていたことが、立証できるため、宿日直許可における許可基準との乖離やオンコールの労働時間該当性に関する証拠としても有用です。ただ、カルテについては、患者の個人情報の記載があることなどから、個人で控えをとったうえで、持ち出すことは法的に問題となり得ることに注意が必要です。
【労働内容に関するもの】
- 残業が指示された書面・メール等
- 指示を受けた際の手控えメモ等
- 残業を承認する旨の書面
- カルテ
- 業務日誌等(の写し)
さらに、残業代の計算を行う上で、就業規則と雇用契約書には、給与や時間外労働に関する手当に関する内容が記されていることもあるため、このような資料についても残業代を算出するために重要です。また、実際の給与の支給状況を確認するために毎月の給与明細も重要な資料です。
【雇用契約に関するもの】
- 雇用条件通知書・労働(雇用)契約書
- 就業規則(写し)
- 給与明細書
(3)残業代の算定
一般的な月給制の場合の残業代の計算方法は、次の計算式のとおりです。
残業代 = 基礎単価(基礎賃金/月平均所定労働時間) × 割増率 × 残業時間
なお、基礎賃金とは、基本給及び労働時間に対して支払われる手当を足し合わせたもので、一定の要件を満たした通勤手当、家族手当及び住居手当等の賃金(除外賃金)のほか、福利厚生費用、並びに賞与等は基礎賃金には含まれません。
また、月平均所定労働時間は、次の順序で計算します。
- 年間所定労働日数を算出する
- 1年間の日数(365日または366日)から、会社の定める休日を差し引く。
- 年間所定労働時間を算出する
- 年間所定労働日数に1日の所定労働時間を乗じる。
- 月平均所定労働時間を算出する
- 年間所定労働時間を12ヶ月で割る。
(4)残業代の請求・交渉
未払いの残業代の請求・交渉を行う場合、残業代請求の基礎となる事実関係・法的根拠、計算結果及び請求額などを整理した文書を送付して請求を行うことが一般的です。
その際に、弁護士に依頼すれば、自らも認識していない未払い残業代なども洗い出したうえで、正確に残業代を算出することができるとともに、医療機関に対して強いプレッシャーをかけられることが期待できます。
また、書面により請求することのメリットとして、仮に、医療機関が当該書面を無視したとしても、残業代を請求した事実を証明でき、消滅時効の進行を一時的に止めることができるという点も挙げられます。
(5)労働審判の申立て・訴訟提起
交渉が難航する場合、労働審判や訴訟といった法的手続に移行することを検討します。
なお、労働審判とは、労働者と使用者間の労働関係の紛争を迅速かつ適正に解決するための制度として、裁判所が関与し、裁判官たる審判官と非常勤の裁判所職員である労働審判員で構成される労働審判委員会が非公開で審理を行います。
期日が原則3回までに制限されており、迅速な解決が期待されますが、その分、申立ての段階から十分な準備をして、充実した内容の申立書と必要な証拠を提出することが重要です。
(6)残業代請求権の時効
残業代を含む賃金の請求権は、現在のところ、3年間行使しなければ時効によって消滅します(労働基準法143条3項)。
そのため、過去の残業代を請求する場合や請求する残業代が長期間に及ぶ場合、早期に弁護士などに相談することが推奨されます。
6 まとめ
以上のとおり、医師(医者)の残業代請求における重要なポイントについて解説させていただきました。
医師の残業代請求においては、通常の残業代請求とは異なり、医師に特有の論点が多く存在するところ、医療機関・医師の労働問題・労働時間管理に詳しい弁護士に相談を行うことが重要です。
当事務所では、複数の医療機関の顧問業務や個別指導対応の経験を通じたノウハウを有しており、また、医療機関向けの法律書籍(医療法務ハンドブック-医療機関・介護施設のための予防法務と臨床法務)を刊行させていただくなど、医療法務に精通した弁護士が在籍しています。
残業代請求に関しては初回無料法律相談も実施しておりますので、労働問題・残業代請求の先生はG&Sまでお気軽にご相談ください。
弁護士費用:残業代請求、未払賃金、退職金
